静岡リニア、知事「首相宛て意見書」訂正のお粗末 長期債務残高を理解せずJR東海の指導を要請

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当時のJR東海の説明文書には、『長期債務残高を「5兆円以内」とすることが適切かつ必要』だけでなく、『地元負担による1県1駅を前提』として、『中間駅については、地域負担(5900億円、うち名古屋まで3300億円)で建設することを想定した』とも記されていた。

2010年の小委員会で、JR東海は東京、名古屋間の神奈川、山梨、長野、岐阜各県の自己負担による中間駅建設を想定すると説明した。ところが、それぞれの地元の強い要望にこたえ、翌年の2011年になって、中間駅の建設費用をすべて負担することを決めた。

中間駅建設費用は総額で約0.6兆円。JR東海が長期債務残高を「5兆円以内」が適切かつ必要としていた2010年の小委員会では、「0.6兆円」の追加負担は想定していなかった。

2021年4月になってJR東海は2028年の長期債務残高見通しを「6兆円」としているが、中間駅建設を含む工事費等の増加が理由となっている。

川勝知事は、約13年前のJR東海の説明文書を問題にするならば、「0.6兆円」の追加負担、すなわちJR東海の負担による中間駅設置も「国に提出した事業計画と明らかに異なる事態」であり、「政府による検証が必要である」と糾弾しなければならなくなる。もし、そんなことになれば、リニア沿線各県のひんしゅくを買うことは間違いない。

「JR東海に指導を」と言うが…

今回の岸田首相宛てのリニア意見書の2つ目にして最大の嘘は、川勝知事が以前から述べていることである。

川勝知事は「地域住民の了解を得られるまでは、水抜きを兼ねる高速長尺先進ボーリングを含む、南アルプストンネル工事をするべきではない」という“真っ赤な嘘”を前提に、「JR東海は、水資源・自然環境保全のメドが立っていないにもかかわらず、水資源・自然環境に影響する南アルプス工事を続けようとしています」とJR東海をさも悪者のように仕立てたうえで、「総理におかれましては、JR東海に対し、厳格なご指導をお願い申し上げます」と臆面もなく言いたてている。

静岡県のリニア議論など聞いたこともない岸田首相らは、川勝知事の“嘘”に慣れていないから、すっかりとだまされてしまってもおかしくない。

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