静岡リニア、知事「首相宛て意見書」訂正のお粗末 長期債務残高を理解せずJR東海の指導を要請

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『水抜きを兼ねる高速長尺先進ボーリング』とは、山梨県内の調査ボーリングを指す。「高速長尺先進ボーリング」を川勝知事は「調査に名を借りた水抜き工事だ」と糾弾したうえで、もし、山梨県内でボーリング調査を行えば、「湧水全量戻しは実質破綻する」などとJR東海を脅している。

1月25日の県専門部会で、JR東海は2月上旬から高速長尺先進ボーリングを山梨県内で実施することを表明した。森貴志・副知事は1月31日、JR東海、国交省宛てに、川勝知事の主張通りに「2月からの山梨県内の調査ボーリングをやめろ」という意見書を送っている。

山梨県内の工事を止めろと主張

静岡県は2022年10月13日、山梨県内のトンネル掘削によって、距離的に離れていても、高圧の力が掛かり、静岡県内の地下水を引っ張るという、科学的根拠を説明できない“トンデモ理論”を唱えて、山梨県内のトンネル工事をどこで止めるのかを議論すべきだという意見書をJR東海に送った。

12月に入ると、静岡県の“トンデモ理論”はトンネル掘削だけでなく、調査ボーリングまで問題にして、「水抜きがあり得る高速長尺先進ボーリングが静岡県の地下水圏に近づくことは同意できない」という意見書をJR東海に送りつけた。

「山梨県内の調査ボーリングで湧水全量戻しは実質破綻する」と川勝知事は脅しているが、もともとの「湧水の全量戻し」とは「静岡県内のリニア工事で発生するトンネル湧水全量を恒久的に大井川水系に戻すこと」だった。県の資料にちゃんと記載されている。

山梨県内のボーリング調査やトンネル工事で水が抜けたとしても、大井川水系にはまったく関係ない。それどころか、「地下水とは動的な水であり、地下水脈がどのように流れているのかわからない」(日本地下水学会)から、静岡県の大井川水系とは違い、県境付近の地下水に静岡県も山梨県もないのだ。静岡県の所有権を主張する「地下水圏」など存在しない。ボーリング調査で水環境に影響があるというのは空想科学小説の世界でしかない。そもそも山梨県内の調査や工事を止める権限は静岡県にはない。

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