任天堂が人気ゲーム「ゼルダの伝説」新作を値上げ 他社にも波及し広範な引き上げの前触れとなるか

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任天堂の人気ゲームシリーズ「ゼルダの伝説」の最新作価格は、家庭用ゲーム機「スイッチ」向けの同社ソフトとしては過去最高になる。今後値上げで追随するゲームメーカーが増える可能性もある。

米国で5月12日に発売される「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」の価格は、69.99ドル(約9200円)。任天堂が発売する新作タイトルの通常価格を10ドル上回る。ソニーグループや米マイクロソフトのゲーム機向けではすでに見られた動きだが、今回の値上げはより広範な引き上げの前触れとなる可能性がある。

ゲームの質やコンテンツに対するプレイヤー側の期待が高まるにつれ、ゲーム開発費も膨らんでおり、世界的にゲームメーカーは値上げに意欲的だが、他社に先駆けて価格を引き上げることには及び腰だった。ゼルダの新作価格を巡る任天堂の今回の決定は同業に歓迎される可能性が高い。

「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」を楽しむプレイヤーPhotographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

コーエーテクモホールディングスの浅野健二郎最高財務責任者(CFO)は1月30日の決算説明会で、「業界全体として、値上げをしていきたい雰囲気というのは特に海外であることは認識している。自社タイトルにおいてはゲームごとに適切な値段を判断することになるが、値上げをするにしても、最初の1社になるのは避けたい」と語った。

カプコンの野村謙吉CFOやグリーの前田悠太取締役も直近の四半期決算の際に同じような見解を示しており、新たなコンテンツ開発に向けた人員や支出の拡大分を吸収するため、値上げをしたいという思いが業界内で広く共有されていることがうかがえた。

任天堂の広報担当者はゼルダの新作について、同社が提供するゲームとしては単体価格として最も値段が高くなることを確認。各ゲームに対して今後もそれぞれに適正な価格を設定していくと説明した。

東京のゲームコンサルタント、セルカン・トト氏は「任天堂が価格面で試してみることができるゲームがあるとすれば、これだ」と指摘。「10ドルの値上げはこのゲームを見送るユーザーの購入喪失分を穴埋めするだけでなく、売り上げ全般の押し上げにつながるだろう」と述べた。

原題:Nintendo’s Zelda Price Hike Opens Door for More Expensive Games(抜粋)

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著者:望月崇、古川有希

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