なお、ジャガー社とのトラブルのもととなったポンプの生産開始は2016年、最初の市場不具合が報告されたのは2019年で、いずれも関氏が社長に就任する以前のことだ。それなのに、「処理が遅い」と責任だけ負わされては関氏もたまったものではないだろう。
稟議書が決裁された昨年6月といえば、2年前に社長に就任したばかりの関氏が永守氏と衝突し、事実上、国内から追放される形でドイツに常駐して欧州の問題案件の処理に当たっていたころである。その3カ月後には社長を解任されてしまう。
関前社長「本件以外の“負の遺産”」
入手した内部資料の中には、稟議書が関係する役員や担当者らに回覧された際に、それぞれが付したコメントの一覧も含まれる。その中の1つに興味深いものがある。当時、社長だった関氏によるコメントだ。
「本件以外の“負の遺産”も含め健全化を急ぎます」
GPM社がトラブルを抱える顧客はジャガー社だけではない。すでにダイヤモンドオンラインが報じているが、ダイムラー社との間でもGPM製のポンプの不具合をめぐって巨額の損害賠償を求められているという。関氏の指す「本件以外の“負の遺産”」はどこまで広がっているのだろうか。
1月24日の決算説明会で永守氏は、構造改革に600億円以上の金額を積むことについて質問され、こう述べている。
「(構造改革にかかる費用は)欧州の負の遺産がいちばん多いわけで8割ぐらい占める。いま品質問題でトラブっているやつがリコールになるんじゃないかとか、そういうことを想定して金額を算出しているわけだ。必ずしもそうなると決まったわけではないが、来期以降に減益要因にならないように引き当てを済ませておく」
説明会の翌日にインターネットで公開された音声を聞いて私は驚いた。そして、説明会に参加したアナリストや記者からさらなる説明を求める質問が出なかったことが不思議で仕方がなかった。処理に数百億円もかかりかねない品質問題が起き、リコールになるおそれもあることを永守氏が自ら認めているというのに、それを追及しないとは。
筆者は以前に日本電産の子会社が顧客に無断で製品の仕様を変更していた問題を明らかにしたが(「仕様を無断変更か、日本電産が抱える新たな問題 空調機器用モーター子会社に無理な収益要求」)、このときも日本電産は事実を明らかにしようとせず、他のメディアはこの問題をさして追及しようとはしなかった。
仕様の無断変更という重大問題はメーカーには説明しても公表されず、今回のGPMの問題もいっさい公に説明がない。こんなことを続けていれば、日本電産が信用を失うことになるのではないか。
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