孫正義氏の"懐刀"が明かす最強の投資術 「ベンチャー投資家は将来を感じ取れ」

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孫氏の懐刀であるムーン氏はPCメーカーを経て、96年に米国での投資を担当するソフトバンクベンチャーキャピタルに入社。その後1年がかりで孫社長を口説き、2000年にソフトバンク・ベンチャーズコリアを設立した

――ファンドの方針や注力分野は?

現在は57社に投資している。グループの方針に従って投資するが、ICT分野にフォーカスするのは設立から変わっていない。ただ、業界にはトレンドがある。10年前はWebが中心だったが、そこからモバイルの世界にシフトしている。今後はICTの中でも複数の技術が収斂していく。コアになるのはICTだが、ロボットやバイオ、機械、宇宙工学といった異なる分野が収斂、融合していくだろう。こうした動きに照準を合わせたい。孫社長の意向としては、「投資をしたら10年で回収できるように」と言われているので、これを念頭に置いてやっている。

具体的には言えないが、バイオやセンサーテクノロジーにかかわる分野で検討している案件がある。最近はウエアラブルデバイスも販売されているが、中国メーカーは簡単にコピーしてしまうので、コピーされないようなユニークなもの、じっくりと時間をかけた研究に基づいたものなど。透析の技術や血圧を正確に測る技術を持つ会社にも注目している。

1年掛けて孫社長とのコンセンサスができた

――ファンド規模やメンバーを増やす考えはあるか?

3月にファンドを追加して3700億ウォン規模になった。ただ、韓国の投資業界はそこまで大きくはないので、ポートフォリオが急拡大するとか、チームを増員する必要はない。前年比で多少増えるかもしれないが。われわれが注力しているのはアーリーステージ、草創期の企業なので、それほど大きな資金は必要ではない。投資金額は平均で200万~500万ドルだ。

グループでは、ソフトバンク本体がレイトステージ(成熟期)もしくは公開会社のM&Aを担当する。その実行部隊がソフトバンク・インターネット・アンド・メディア(米シリコンバレー。ニケシュ・アローラ氏がCEOを務める)という位置づけだ。ソフトバンク・ベンチャーズ・コリアはアーリーステージの企業に特化している。

――孫社長とはどのようにコミュニケーションしているか?

私自身がグループに入ったのは1996年。米国のソフトバンクベンチャーキャピタルに入社した。孫社長と出会ったのは1999年で、1年かけて話し合い、ようやくコンセンサスができて、ベンチャーズコリアを作っていいとの許しをいただいた。活動状況によって異なるが、孫社長とは、毎日連絡を取り合うときもあれば、3カ月に1回くらいのときもある。長い付き合いなので、何かあれば連絡できるし、いつでも柔軟に答えてくれる。

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