平均6200万「新築マンション」あと3年は高騰の訳 売れ行きは悪くなりつつあるのに下がらない

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2020~2022年には新築価格は適正価格よりも13%ほど高くなった。それ以前(2011~2019年)の5%高から比較すると1割近く割高になっている。ここでの適正価格とは、筆者が主宰する無料会員制サイト「住まいサーフィン」において、周辺の築浅中古成約事例から想定される新築の適正価格(沖式時価)を算出したものだ。

一方、中古で売り出されている広告上の価格は成約している実勢相場に対して1~2割高く設定されている。中古の購入を検討しているなら、自分が買いたい価格で指値を入れるので、適正価格で買える可能性がある。

新築マンション価格がさらに上がる理由

マンション価格は2013年から一直線に右肩上がりに上昇しているが、これは金融緩和で必要以上に刷られたお金が担保の取れる貸出先である不動産に流れるからである。この金融緩和を決定したのは第2次安倍政権時であり、黒田東彦日銀総裁は今年の4月に任期を迎える。

後任人事は2月に発表される見込みだが、異次元に緩和された金融緩和の手仕舞いはハードランディングできそうにないため、政策変更するにも相応の時間がかかると考えられる。

新築分譲マンションの価格は用地を購入した時点でほぼ決まるが、実際に新築マンションとして発売されるのはその2年後になる。足元のマンション用地の仕入れコストは上昇していることから、現時点で2~3年先までは価格が上がり続けることはすでに決まっているのだ。

また、不動産デベロッパーに流れている資金量を想定できる日銀短観の金融機関の貸出態度指数を見ると、いまだに高水準であることから、この先3年程度まで新築マンション価格は高騰を続けそうなトレンドにある。

これらの話を総合すると、今後の新築マンション市場は以下のようになりそうだ。

・価格の上昇は2026年ごろまで続く
・価格が上がるので、供給は減って現状の3万戸から2万戸に近づいていく
・立地は悪化し続け、好立地の物件は少なくなる
・立地の悪化から、新築マンションの資産性は落ちる
・中古と比較して割高な新築物件の価格下落リスクは高くなる
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沖 有人 不動産コンサルタント

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おき ゆうじん / Yujin Oki

1988年、慶應義塾大学経済学部卒業後、監査法人系・不動産系のコンサルティング会社を経て、1998年に現スタイルアクトを設立。住宅分野において、マーケティング・統計・ITの3分野を統合し、日本最大級の不動産ビッグデータを駆使した調査・コンサルティング・事業構築を得意とする。設立当初から運営する分譲マンション価格情報サイト「住まいサーフィン」の会員数は30万人以上。『マンションは10年で買い替えなさい』(朝日新書)、『タワーマンション節税! 相続対策は東京の不動産でやりなさい』(朝日新書)など著書多数。

 

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