トヨタ社長創業家・章男氏から53歳佐藤氏にバトン 今後4-5年かじ取り間違えばトヨタでも危うい

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世界最大の自動車メーカーであるトヨタ自動車次期社長に昇格する佐藤恒治執行役員(53)はエンジニアで、高級車ブランド「レクサス」の責任者やトヨタのチーフブランディングオフィサー(CBO)などを歴任した。電気自動車(EV)シフトなど大きな変動期にある自動車産業で、若さを武器にトヨタのかじ取り役を担うことになる。

「モビリティーカンパニーへの変革」。佐藤氏は26日夕のオンライン会見で、新社長としての課題をこう説明した。電動化や自動運転など新しい技術を念頭に、「これからの車はインフラなど社会システムの一部となる」とし、そのために「車を進化させていくのが仕事」だと述べた。

東京オートサロンでAE86に挟まれて並ぶ佐藤氏(左)と豊田社長(右)(23年1月、千葉市)Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

創業家出身の豊田章男社長は、リーマンショック直後の2009年に社長に就任した。顧客重視や地道な原価低減などトヨタの原点に立ち返って経営改革を断行。米国での巨大リコール問題や東日本大震災、新型コロナウイルス感染症の世界的流行などさまざまな危機対応に取り組んできた。

豊田氏が社長に就任したのも現在の佐藤氏と同じ53歳だったが、トヨタを取り巻く経営環境は当時と大きく異なり、EV専業である米テスラが株式時価総額でトヨタを上回ったことに象徴されるように、従来の自動車産業の枠組みを変える技術的な地殻変動が起きている。

66歳の豊田社長も会見で「私はもう古い人間」だとし、最新の技術に関する経営判断に不安もあることから、「私自身一歩引くことが今必要なのではないか」と佐藤氏やその部下ら若い世代にたすきを渡すことを決心したと述べた。

1992年にトヨタに入社した佐藤氏は、レクサス関連の業務に長く携わり、20年1月にレクサスインターナショナルのプレジデントに就任。21年1月からは執行役員に加えてトヨタのCBOとして、ブランドイメージの構築に尽力してきた。トヨタは21年12月、世界で販売する全てのレクサス車を35年にEV化する方針を打ち出した。

「モリゾウ」と呼ぶ関係

トヨタのモータースポーツ車両の開発などを担う社内カンパニー、ガズーレーシングカンパニーのトップも務める佐藤氏は、レーサーとして国内外のレースに出場する豊田氏を時にレーシング名である「モリゾウ」と呼ぶなど、親しい関係を築いてきた。

今月千葉市で開かれた世界最大級のカスタムカー(改造車)の展示会「東京オートサロン」では、2人でトヨタの旧車であるAE86(ハチロク)のマニュアルトランスミッションのEV改造車を披露。当日の会見では、佐藤氏が「勢いで買ってしまった」というハチロクを自身のSNS上で頻繁に言及していることを豊田氏が笑いながら紹介する一幕もあった。

ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生アナリストは佐藤氏について、エンジニアとしてのバックグラウンドを持つとともに、レクサス部門のトップを務めるなどマネジメントスキルの研さんも重ねていると評価。豊田氏が会長となって引き続き経営に携わることで、経営方針や戦略の継続性や一貫性は保たれるだろうとの見方を示した。

SBI証券の遠藤功治アナリストはトヨタについて市場ではEVの波に乗れるかという懸念があるとし、今後4-5年がトヨタにとって「クリティカルな期間になる。かじ取りを誤れば、トヨタですら危うくなる」と佐藤氏の責任の重さを指摘した。

--取材協力:、.

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著者:稲島剛史、Nicholas Takahashi

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