「創造的破壊」は経済全体のパイを大きくする 『創造的破壊の力』『国商』など書評4冊

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ブックレビュー『今週の4冊』

 

[Book Review 今週のラインナップ]

・『創造的破壊の力 資本主義を改革する22世紀の国富論』

・『国商 最後のフィクサー葛西敬之』

・『琉球切手を旅する 米軍施政下沖縄の二十七年』

・『進駐軍を笑わせろ! 米軍慰問の演芸史』

『創造的破壊の力 資本主義を改革する22世紀の国富論』フィリップ・アギヨン、セリーヌ・アントニン、サイモン・ブネル 著
『創造的破壊の力 資本主義を改革する22世紀の国富論』フィリップ・アギヨン、セリーヌ・アントニン、サイモン・ブネル 著(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)

評者・BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎

創造的破壊──。経済学者のシュンペーターが提唱した概念だが、主流派経済学の成長理論に精緻に取り込むことは困難とされていた。それに成功し理論の発展に貢献した権威が、イノベーションをわかりやすく論じた。

イノベーションに不寛容な日本 社会と政府は何をするべきか

経済成長の源泉たるイノベーションに企業が邁進するのは超過利潤、あるいは先行者利益を得るためで、政府の研究開発支援や知的財産権保護は不可欠だ。一方、新たなイノベーションは古いイノベーションの超過利潤を消滅させるから、成功企業もあぐらをかいてはいられない。

19世紀初頭は蒸気機関が第1次産業革命を、20世紀初頭は電気が第2次産業革命をもたらした。画期的な汎用技術の社会実装が成長の時代を生んだのだ。20世紀末に始まったITデジタル革命は創造的破壊を繰り返すが、なぜか成長につながらない。それは、ITデジタル技術の活用で成功した巨大企業がロビー活動に精を出して新規参入や他社のイノベーションを阻害しているためで、買収や合併を規制する反トラスト政策の強化が必要だと著者はいう。

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