源氏物語、巧みな「男同士の艶っぽい描写」の面白さ 読者サービスの一種?行間から膨らむ妄想

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紫式部は『源氏物語』で色恋沙汰ばかり描いているわりに、どぎつい直接的な描写はほとんどしない。だからこそ読者は行間から妄想を膨らませるしかない。小君と源氏の間に関係があったのかなかったのかは、読者の想像にお任せします、というわけだ。

<原文>
「よし、あこだに、な棄てそ」とのたまひて、 御かたはらに臥せたまへり。 若くなつかしき御ありさまをうれしくめでたしと思ひたれば、つれなき人よりはなかなかあはれに思さるとぞ。

<意訳>「まあいい、おまえだけでも私を愛してくれ」と源氏は言った。そして小君をそばで寝させた。若く美しい光源氏の横で眠れることが、小君は嬉しかった。光源氏もまた、薄情な女性より小君のほうがよっぽどかわいいなあ、と思っていた。

遠くの高嶺の花より、近くのかわいい花、というわけで、光源氏はつれない空蝉よりもなついている小君をかわいがっている。空蝉と小君が並列で語られていることからもわかるように、やはり小君のことは光源氏も愛らしく思っていたのだろう。読んでいてドキドキしてしまう場面である。

男性同士の密な友情も描く

さらに、恋愛ではなくとも男性同士の密な友情も描かれている。例えば『源氏物語』の「紅葉賀」の巻。この巻のヒロイン源典侍は、なんと還暦間際のおばあちゃんである。若い青年だったころの光源氏と頭中将は、あるうわさを聞きつけて、源典侍に2人とも手を出そうとするのだ。

ある夜、光源氏が源典侍の邸宅に泊まっていた。すると、誰か男が乗り込んできた。彼は怒って太刀を抜いた。もちろん光源氏は驚いた。しかし――刀を抜いたその男は、なんと自分の親友の頭中将だったのだ。

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