セコム創業・飯田亮が89年貫いた「艶っぽい」人生 生まれながらの事業家が究めたビジネスデザイン
飯田氏は晩年、「ビジネスデザインできる人が欲しい」と強調していた。
「ビジネスデザインはまねられない。なぜなら、アートに近い資質が求められるからだ。名人の教えを受けた弟子が必ずしも名人であるとは限らない。それと同じだ。経営理念は伝えられてもビジネスデザインは伝えられない。これが頭の痛いところだ」と吐露していた。
独自のビジネスデザインを基に構築した現在のセコムの形を飯田氏は「国連の多国籍軍のような組織」と表現していた。
セキュリティ事業をコア事業とし、それが、防災、医療、保険、地理情報、情報通信、不動産、などの各事業が自由闊達に隣接事業と手を組み、グループ内の経営資源を無駄なくより俊敏に活用できるようにした。
「カサカサしたくない」
イノベーションは、経営資源の新結合により生まれると論じたシュンペーターではないが、大所高所から見ていれば見逃がしがちな相性の良い小さな経営資源を組み合わせることにより生まれることがある。グループ企業社長や従業員だからこそ気づく「現場の実践知」が、セコムの経営に柔軟性を与えているのだろう。さらに、これらが結合することにより、全社的なイノベーションが創造される。
営利を追求する競争力だけでは「艶っぽく」「色っぽく」ないと飯田氏は考えていた。「立派な経営の精神を実践していなければならない」と。
「行動力のある経営者はたくさんいらっしゃるが、何となく艶っぽくない。われわれはカサカサしたくない」と粋な美学を持っていた。
「艶っぽい企業」に育て上げた飯田氏を超えるビジネスデザインを構築できる人がいないとなれば、今後のセコムはどうなるのだろうか。現在、セコムでは、会長を日本銀行出身の中山泰男氏、社長は娘婿の尾関一郎氏が務めている。売上高は伸び続けているが、将来、セコムは大きく変容し、もっと「艶っぽい企業」になっているかもしれない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら