狭軌・標準軌直通、スイスフリーゲージ列車の実力 観光路線で実用化、日本と仕組みはどう違う?
MOBにとってはこれが悩みの種で、降りる理由のない利用客に乗り換えを強いることを解消しようと、これまでさまざまな案を検討してきた。BLSのツヴァイジンメン―インターラーケン間に狭軌の線路を敷く「3線軌条」とする案も検討されていたが、構造が複雑で建設費もかかることから断念し、最終的に軌間可変装置の実用化という案に落ち着いた。
日本のフリーゲージトレインでも注目を集めていた軌間可変装置、スイスで実用化されたのはどのような構造なのか。
ごく簡単に説明すると、各台車の側面に取り付けられた補助輪が、地上側の軌間可変装置付近に設けられたガイドレールに支えられることで、走行用の車輪が浮いた状態を生み出し、その間に車軸が伸縮して軌間を変換するという仕組みだ。切り替えの速度は時速15kmで、駅構内の走行速度より少し遅いくらいの速度だ。
スペインで50年以上前に実用化しているタルゴ車両の軌間可変装置と似ているが、スペインの装置はガイドレールの上を引きずって滑らせるという代物で、滑らせる台車の支点部分の摩耗を防ぐためレールへ散水するという、非常に原始的なものだ。それと比較すると、補助輪で支えるという部分では進化している。
軌間可変は「客車のみ」
軌間可変装置は動力のない客車のみで、機関車はそれぞれの線路幅のものが用意され、ツヴァイジンメンで交代する。機関車が牽引もしくは推進運転するため、客車は運転台を装備する。
運用は、モントルーからの列車の場合、まずMOBの狭軌の機関車がツヴァイジンメンまで牽引し、ツヴァイジンメン駅構内に設けられた軌間可変装置をそのまま通過して客車を標準軌に切り替える。狭軌・標準軌の両方の機関車が走れるよう、駅構内には両方の線路が敷かれている。
客車の軌間切り替えが完了すると、ここまで牽引してきた狭軌用機関車は側線へと待避し、今度は後方から標準軌の機関車がやってきて、編成後方に連結する。連結作業が完了すると、客車を先頭に推進運転でインターラーケンを目指す。
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