狭軌・標準軌直通、スイスフリーゲージ列車の実力 観光路線で実用化、日本と仕組みはどう違う?

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逆方向の場合は、標準軌用機関車を先頭にツヴァイジンメンへ進入。機関車は切り離されると同様に側線へ待避し、後方に待機していた狭軌用機関車を編成後部に連結。発車後、すぐに軌間可変装置を通過して客車の車輪幅を狭軌に切り替え、モントルーを目指す。

機関車の連結・解放作業に多少の時間を要するが、軌間の変更そのものは本当にあっけないものだ。切り替えについてももう少し大きな作動音がするものと想像していたが、補助輪がガイドレールに乗った際に鉄橋を通過するような金属音がわずかに聞こえる程度で、ほとんど気にもならない程度の音だ。

軌間可変装置の速度標識
軌間可変装置の通過制限速度は時速15km(撮影:橋爪智之)

「低速なら可能」の証明に?

日本のフリーゲージトレインは、新幹線と在来線の直通用としての導入は見送られた形だが、これは軸重の問題に加え、最高時速260kmという新幹線での使用という過酷な条件が付加されたことで、ハードルが一気に高くなってしまったことが大きな要因である。もちろん、高速運転をするために厳しい耐久性能も求められる。

すでに実用化しているスペインとの比較では、標準軌(1435mm)と広軌(1668mm)の間での軌間変換は、軌間可変装置そのもののスペースを十分に取れるという点で、日本の狭軌(1067mm)より有利だ、と指摘する声も多いが、今回のスイスの事例は日本とほぼ同じ、標準軌と狭軌(スイスはメーターゲージ=1m)であるため、非常に興味深い。

動力車の軌間可変機構の有無という違いはあるが、スイスでの実用化は、新幹線と在来線のような過酷なシチュエーションでなければ十分実用に耐えうるものができる、ということを実証したともいえる。日本では軌間の異なる東急線と京急線をつなげる「蒲蒲線」や、軌間の異なる路線を保有する近畿日本鉄道での導入構想といった話もあるが、新幹線より低速な在来線同士の接続を視野に入れた軌間可変装置の開発を引き続き期待したいところだ。

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橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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