つまり、先物価格とは、将来成立するであろう価格の予想値ではない。現在の価格と金利によって、自動的に計算される値だ。
ところで、海外のヘッジファンドは、いま成立している国債の先物価格よりも、将来の時点における現物価格が安くなるだろうと予想している。つまり、いまの先物価格は高すぎると判断しているのだ。そこで、先物売りする。予想が的中すれば、将来時点において、国債を現物価格で買って、それよりも高い先物価格で先物取引を精算することになる。だから、利益が得られる。
こうした取引を契約することを、「ショートポジションを取る」という。
海外のファンドは、「国債価格が将来、いまより下落する」(金利がいまより上昇する)という予想の下で、日本国債のショートポジションを取ったのだ。
日銀は大量の国債購入に追い込まれる
ヘッジファンドのショートポジションの増加は、10年物国債に対する売り圧力を強める。これにより、金利を押し上げる力が働く。
その理由はつぎのとおりだ。
ショートポジションが増えると、国債の先物価格が下落する。裁定条件を通じて、これは現在の現物価格を下落させる。
つまり、近い将来に国債価格が下がるという予想があると、国債の先物売りが増え、それが将来の先物価格を下げ、そして裁定条件を通じて、現在の国債の価格を下げる。つまり、金利を押し上げる力が働くのである。
これに対して、日銀は10年国債を無制限に買い入れる措置をとった。この結果、日銀の国債購入額が異常に増加した。
2023年1月13日には、5兆0083億円の国債を購入した。1日の購入額として2日連続で過去最大を更新し、2022年の1日の買い上げ額の平均の5倍に達した。
このように巨額の国債を購入したため、市場で取引できる国債が枯渇してしまった。これに対処するため、日銀は国債を証券会社などに貸し出すことを行っている。
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