日本の再生医療、法改正で製品化ラッシュへ 海外も羨む早期承認、最短2年で発売可能に
現在、国内で製品化を目指して治験中または承認申請済みのものは、テルモの重症心不全用の骨格筋芽細胞シートなど10~20品目ある。 臨床研究は、冒頭紹介した目の難病である加齢黄斑変性を対象とするiPS細胞で作った網膜の細胞の移植など100件以上(同65件)に上る。早期承認制度の導入により、新たな治療法の実用化が加速しそうだ。
海外のバイオベンチャーや大手企業も、日本で再生医療製品の開発を進めようと進出の準備を進めている。「日本の制度を勉強したい」「どうやったら日本の制度を使えるのか?」――法改正の中心となった経済産業省生物化学産業課の江崎禎英課長の元には、欧米からこのような問い合わせがひっきりなし。米国、英国、フランスなどを飛び回り、制度を説明しては質問攻めにあう忙しい日々を過ごしている。
再生医療の市場は2050年に38兆円規模へ
「世界で再生医療製品がなかなか承認されない中、日本は一気に制度を変えて早期承認と保険適用を可能にした。それが海外企業にとって非常に大きな魅力になっている」(江崎課長)。
業界団体の再生医療イノベーションフォーラム(FIRM)も、海外企業を主な対象とする相談窓口を設けた。日本の法制度の活用方法の説明や、海外企業とFIRMに加盟する国内企業とのビジネスのマッチングなどを行う。
法改正によって国内外の企業による製品投入が促され、再生医療の普及が進めば、産業としても拡大が期待される。FIRMの会員企業数は3年前の20社程度から123社(3月末時点)まで拡大した。
製薬会社やバイオベンチャーだけでなく、培地や試薬といった消耗品を作る化学・材料業界、細胞培養装置などを作る機械・装置業界、細胞を輸送する物流業界、再生医療の患者向けの補償制度などを作る保険業界など、さまざまな業界が商機を狙う。経済産業省の推計では、2050年の再生医療の世界市場規模は38兆円、周辺産業は15兆円まで拡大する見通しだ。
これまでは「技術で勝ってビジネスで負ける」パターンが多かった日本だが、再生医療に関しては同じ轍を踏むわけにいかない。ビジネスを後押しする法制度が整えられた今、世界との本格競争が始まる。
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