つまり、少なくとも以上3つの点で、先生が忙しすぎることは子どものためにもならないのです。このことを保護者ともしっかり認識を合わせていく必要があります。
「先生が過重負担で眠いまま授業をするほうがよいと思いますか、それともコメント書きや行事の一部は簡素化して、しっかり元気に授業してもらうほうがよいと思いますか?」
そう聞かれたら、保護者のほとんどは、先生が元気なほうがよいと答えるでしょう。変に遠慮や忖度をしすぎずに、率直に、働き方改革を進める必要性や趣旨をちゃんと説明、共有していけばよいのです。
学校の勤務実態や取り組み状況を保護者とも共有する
数年前ならいざ知らず、最近はタイムカードやICカードなどによって勤務時間(在校等時間)をモニタリングする学校がほとんどです。教育委員会にもデータを提出していますよね。
でも、こうした現実、ファクトを、どこまで保護者とも共有できているでしょうか。時間外の平均値だけでは実態は十分に伝わりません。定時で終業できている人はほとんどいないこと、月の時間外が45時間以上や80時間以上は何%くらいいること、こうした教職員は過労死などのリスクが高いまま働いていることなどを伝える必要があるのではないでしょうか。
個々の事情はありますが、おおよその傾向としては、民間企業では労働基準法が改正されたこともあって、ずいぶんと働き方は変わってきています。おそらく学校の実態に驚かれる保護者も少なくないと思います。
もう1つ重要なのは、残業が多い(勤務時間が長い)かどうかだけでなく、小中学校や特別支援学校などでは休憩もろくに取れていないこと、さまざまな丁寧な配慮やケアが必要な児童生徒が増えていて、ストレスのかかる仕事であることです。いわば、労働の量だけでなく、密度や質についての情報共有を進める必要があります。
こうした実態をお知らせしたうえで、学校でできることも進めてはいるけれども、保護者の理解、応援が必要であることを伝えてほしいと思います。
教育研究家、一般社団法人ライフ&ワーク代表
徳島県出身。野村総合研究所を経て、2016年に独立。全国各地の教育現場を訪れて講演、研修、コンサルティングなどを手がけている。学校業務改善アドバイザー(文部科学省委嘱のほか、埼玉県、横浜市、高知県等)、中央教育審議会「学校における働き方改革特別部会」委員、スポーツ庁、文化庁において、部活動のあり方に関するガイドラインをつくる有識者会議の委員も務めた。Yahoo!ニュースオーサー、教育新聞特任解説委員。主な著書に『教師と学校の失敗学 なぜ変化に対応できないのか』(PHP新書)、『教師崩壊』(PHP新書)、『こうすれば、学校は変わる! 「忙しいのは当たり前」への挑戦』(教育開発研究所)、『学校をおもしろくする思考法 卓越した企業の失敗と成功に学ぶ』『変わる学校、変わらない学校』(ともに学事出版)など多数。5人の子育て中
(写真は本人提供)
私は、数年前からずっと講演・研修会などでは申し上げてきましたが、保護者の協力を求める前に、もっと現実の「情報を共有する」こと、そして働き方を見直すことが子どものためにもなるという「思いを共有する」ことが先決だと考えています。



















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