ひよったままでいいのか?
学校や地域ごとに取り組み状況や温度差はありますが、こうしたことを踏まえるなら、冒頭で紹介したような声が出てくるのも理解できます。ざっくり申し上げると、学校は保護者を恐れて、ひよっているのです。
一方、会議の見直しや書類の削減、定時退勤日の設定などは、保護者の反対はまず起きませんので(ほとんどの保護者はそうしたことにあまり関心はないでしょう)、学校としては進めやすい改善です。しかしその程度のことでは、大した時間を生み出すことはできません。
とはいえ、皆さんと改めて考えたいのは、働き方改革や教職員の負担軽減が進まないのは、本当に保護者のせいなのだろうかということです。
ちょっと意地悪な見方かもしれませんが、校長などが「保護者との関係でこれは難しい、あれはすぐにはできない」などと言い訳をするばかりで、しっかり対話していくことや根本的な見直しに着手しようとしないから、学校は忙しいままなのではないでしょうか。
もちろん、私は学校や先生たちだけが悪いと言うつもりはありませんし、保護者や地域社会にももっと理解、協力してもらいたいと思うことは多々あります。しかし、学校側も踏み込みが足りないのではないか、遠慮や躊躇をしすぎている側面もあるのではないか、ということを考えてもらいたいのです。
まずは事実の共有と趣旨説明から
多くの先生たちは、昨日も今日も、児童生徒のために一生懸命、さまざまなことをしてくれています。しかし、それでずっと長時間勤務や過重負担がかかったままだと、どうなるでしょうか。
1. 教師の健康への影響
・教師の過労死が相次いでいる
・精神疾患者も毎年約5000人
2. 教育すなわち児童生徒への影響
・心身が疲弊してよい授業にはならない
・AI(人工知能)などで便利になる時代、教師がクリエーティブに深く思考する時間がなくては、子どもたちの思考力や創造性が高まる教育活動にならない
3. 人材獲得への影響
・ワーク・ライフ・バランス無視な職場では優秀な人材は来ない
・すでに人材獲得競争の時代
出所:妹尾昌俊『こうすれば、学校は変わる! 「忙しいのは当たり前」への挑戦』を基に作成
第一に、健康を害します。最悪の場合、過労死などに至るケースが後を絶ちません。精神疾患などで長期に休まれる先生は多いです。欠員が生じても、昨今は教員不足、講師不足ですから、なかなか補充が利きません。すると、現場で何とかやり繰りして対処することなり、教職員はさらに疲弊してしまいます。こうした悪循環になっている学校は少なくありません。
第二に、教育や児童生徒のケアに関わります。眠いままでいい授業になるでしょうか。睡眠不足ではついイライラしやすくなるなどの影響もあると確認されています。協働的で探究的な学びが重要なことは言うまでもありませんが、先生たちが探究する時間や楽しく学ぶ時間がなくて、どうして子どもたちの成長を支援できるでしょうか。
第三に、人材獲得への影響です。プライベートを過度に犠牲にするような職場、1年目からそうとうむちゃ振りをするうえに支援も手薄なところには、喜んで就職したいとは思ってもらえません。



















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