野口聡一さん解説、ロケットの燃料の意外な実態 時代ごとの社会的な要求を反映して開発は進む

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観測ロケットで技術を発展させ、衛星打ち上げロケットへ……という国家のロケット開発がたどってきた道のりを、21世紀では世界の民間宇宙企業が歩んでいます。

2018年にニュージーランドで初めて衛星打ち上げロケットの開発に成功した「ロケットラボ」は、その前に「アテア1」という観測ロケットを成功させていました。北海道の大樹町でロケット開発を行っているインターステラテクノロジズは、2019年に観測ロケット「MOMO3号機」で113.4kmまでの打ち上げに成功。観測ロケットとしての運用を続けながら、衛星打ち上げロケット「ZERO」の開発に取り組んでいます。

推進剤による違い

日本初の衛星打ち上げロケットとなったラムダロケットは、固形の燃料を使用していた「固体ロケット」です。ゴムの一種ポリブタジエンなどに酸化剤を混ぜて固めるもので、コンパクトでロケットを作りやすいという特徴があります。

一方で、より大きな人工衛星を打ち上げることができる液体燃料を使った大型ロケットが世界のロケット市場で活躍しています。日本で1970年代に開発が始まった当時は、「ヒドラジン」という添加しやすく失敗の少ない推進剤を使用していました。この推進剤は旧ソ連からロシアで活躍した「プロトンK」ロケットや中国の「長征2号」「長征3号」、インドの「PSLV」ロケットで実績を上げています。しかし、ヒドラジンは人体に有害で扱いにくいという欠点もありました。

アポロ宇宙船を打ち上げた超巨大ロケットの代表であるアメリカの「サターンV」ロケット第1段のエンジンは、ケロシン(RP-1)という灯油の一種と液体酸素を組み合わせた推進剤を使っています。ケロシンと酸化剤の組み合わせは大型ロケットでは非常に多く使われ、2022年に年間61回という驚異的な打ち上げ回数を達成したスペースXの主力ロケット、「ファルコン9」もケロシンと酸化剤の組み合わせを使用しています。韓国が2022年に初めて国産技術で打ち上げを成功させた「ヌリ」ロケットも同じ推進剤を採用しています。

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