トヨタ、車を"売らない"贅沢イベントの狙い 「レクサス」のマーケティングにあの手この手

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今回のディナーイベントでは地元伝統芸能の鑑賞も

「ブランドに必要な歴史とストーリーがレクサスにはない」と豊田章男社長が常々認めるように、レクサスは、自動車の性能を超えた「何か」の確立に試行錯誤する。日本各地の若手職人を応援するプロジェクトやアーティストへの支援など、クルマとは直接関係ないマーケティング活動にも力を注ぐ。ダイニングアウトもその一環だ。

ダイニングアウトの狙いは、その活動を通じて日本各地の伝統文化や食材の魅力を伝えること。レクサスはドイツの高級車に対抗したブランディングを、日本の歴史やモノ作りの精神としようという意図がある。

ブランドは一朝一夕にして成らず

今回のディナーイベントの参加料金は約10万円(宿泊料込み)。2日間で約100人が参加した。北海道洞爺湖サミットなどを担当したフラワーアーティストによる装花、東京でも有数の予約が取れない和食店が担当する料理、著名評論家による解説など、イベントにはかなりの費用がかかっており、参加料金だけではまかなえていないはず。つまり、非日常を体験してもらうための”コスト”をレクサスが負担している。

静岡で物流業を営む浅原諒蔵さんと敦子さん夫妻は、付き合いのある旅行代理店の紹介で初めてイベントに参加した。「静岡ではオシャレをして食事する場所や機会がない。料金は高いけどその価値はあった」と諒蔵さん。妻の敦子さんも「こうしたイベントがあればまた行きたい」と満足げだった。

諒蔵さんはレクサスに乗っているが、「性能もいいし価格もお手頃だけど、高級車といえばベンツ。高級ブランドは一朝一夕にはできないね」と、イベントには満足でもブランドに対する評価は甘くなかった。

米国でレクサスを立ち上げてから今年で26年。ラグジュアリーなブランドイメージの確立は、ある意味で終わりのない作業ともいえる。華麗でいて地道な活動を積み重ねた先に、どんな「歴史とストーリー」を生み出せるのか。トヨタの最上位ブランドが展開するマーケティングはこれからも模索が続きそうだ。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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