国鉄形が復活、「455系観光急行」はなぜ人気か? わかる人しかわからないが、わかる人は案外多い

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

列車名は「急行」で、直江津―市振間と直江津―糸魚川間往復の各順に1〜4号の番号が振られている。公式の列車名を「急行」のみとすることで、クハ455形に掲げられるヘッドマークはたんなる“飾り”の扱いとされ、「越後」「妙高」「ゆのくに」「ひめかわ」「立山」など懐かしの北陸急行や沿線にちなむ愛称が自在に掲出される。

MT54形モーターの音を響かせ日本海沿いを走る(浦本ー能生間、写真:山井美希)

2021年のオリンピック・パラリンピック開催時には、前回1964年に東海道線で運転された「オリンピア」も登場した。また、冬期のトンネル内のつららによるガラス破損をなくすために塞がれてしまっていた種別表示幕部には、往時の使用感まで表現した「急行」のステッカーが貼られている。

車内は413系のみならず、クハ455形も普通列車用にロングシートや吊手等を備えたまま(ボックス席は計8か所)だが、それは座席を置き換えると、工事そのものに加えて車両改造としての手続きが必要になるなどの諸般の事情から。一方、当初は地方の低いホームでの乗降用に設けたステップゆえに、逆に電車の床高さにホームを合わせた春日山駅では逆段差を避けて通過としていたが、市役所最寄りなどで利用が多く乗降口のステップを埋めている。

クハ455形の1号車は指定席としており、2・3号車が自由席。指定席は、食事やスイーツと一緒に楽しめるセット商品として同社のWebページから申し込む必要がある。自由席車両でも急行料金(500円)が必要だが、運転日に販売されるホリデーツアーパス(3000円)は急行の乗車も可とされている。

急がないで行く急行列車

妙高高原発下り快速の直江津到着10時35分。それからインターバルを挟んで11時26分、「急行1号」は「急がないで行く急行列車です」とのユニークな案内とともに日本海沿いのコースに踏み出す。

乗客の多くは上記土休日用1日パスを手にしているが、駅ではコレクションの硬券急行券を買い求め、さらに車掌から往時の仕様を再現した車内補充券の急行券を求めて、さらにグッズや飲み物、菓子類の車内販売に手を延ばしたり。車内の一角に置かれた「四五五神社」は、廃車を免れ現役を継続するこの電車をご神体に健康長寿にご利益があるとかで、神妙な参拝にしてはみなずいぶんと笑顔で、浄財を投じてゆく。

国鉄型電車の定番、MT54形モーターの快音やコンプレッサの脈動を聞き、日本海が迫る箇所は見物の徐行運転、能生駅では時刻表にない15分の運転停車で地元の笹寿司販売、そして梶屋敷を通過すると直流から交流への電源切り替えで約40秒、車内照明が消灯するなど、昔と今の旅が交錯した時間が過ぎてゆく。

次ページ朝から晩や、朝から朝まで乗る強者も
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事