欧州議会「カタールから金品」汚職で大激震の背景 副議長が逮捕される大スキャンダルが発覚

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EUは過去に、肥大化した欧州委員会の官僚による統治が批判され、民主主義を守るため、欧州議会の権限を増す転換を行った。

例えば対中国の包括的投資協定(CAI)は、EUにとって中国市場をEU向けに開放させるために2013年に協議が開始され、欧州委員会が2020年12月に7年越しで原則合意にこぎ着けた。ところが、欧州の対中イメージは2020年以降、香港やウイグル族への人権弾圧で悪化し、欧州議会が批准の段階で協定は中国の人権問題を十分に検討していないと問題視する決議を賛成567、反対17の圧倒的多数で採択し、棚上げされる事態となった。

欧州議会の影響拡大を見た域外のロビイストたちは議会メンバーへの働きかけを強化しており、議員らは汚職のリスクにさらされるようになった。

欧州議会議員は汚職に染まりやすい体質がある

しかし、欧州議会の腐敗は長年放置されてきた問題で、過去にも汚職はあったとされるが、闇から闇に葬られてきたという。さらに欧州議会議員は特権が多く、筆者の友人でフランス選出の欧州議会議員は、国会議員より報酬が高く、さまざまな特権も多く、汚職に染まりやすい体質があることを認めている。

EU政治に多大な影響を与える欧州議会にとって、EU市民からの信頼は最大限重視されることだ。その意味で、カタール・ゲートは欧州議会に大きな傷をつけたことになる。ただでさえ、EUのガバナンスが弱まっているとされ、さまざまな改革が急がれる中にあって、議会不信の高まりは致命的ダメージともいえる。

コロナ禍からの復興だけでなく、ウクライナ紛争の長期化によるエネルギー価格を含む物価高騰で、EUとして決定しなければならない案件は山積みだ。とくにロシアの脅威に直接さらされるヨーロッパの安全保障の立て直しも急務だ。ロシアは欧州議会議員の弱点を熟知しているとも指摘されている。そんなときに欧州議会の信頼性が損なわれ、意思決定が迅速にできない事態に陥ることは絶対避けたいところだ。

安部 雅延 国際ジャーナリスト(フランス在住)

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あべ まさのぶ / Masanobu Abe

パリを拠点にする国際ジャーナリスト。取材国は30か国を超える。日本で編集者、記者を経て渡仏。創立時の仏レンヌ大学大学院日仏経営センター顧問・講師。レンヌ国際ビジネススクールの講師を長年務め、異文化理解を講じる。日産、NECなど日系200社以上でグローバル人材育成を担当。

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