夢の乗り物「リニア新幹線」に乗って感じた疑問点 地震の際の緊急停止は?検査サイクルは?

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最後にリニアの安全走行を維持するための検査体制についても聞いてみた。通常鉄道の検査は3~10日以内に行う仕業検査または列車検査、3カ月以内に実施する交番検査または月検査、状態・機能検査、4年ごとの重要部検査、8年ごとの全般検査などがある。リニアはまだ実験段階だが、日々試験を実施しているので、検査も必要となるのではないだろうか。

JR東海の広報部・東京広報室によれば、「営業運転をしていないので、現在は、営業運転に向けて検査の実証を行っている段階」だという。現在山梨リニア実験線では、実際の営業運転を想定した運用等を行うことにより、長期間の運転に対応した車両や地上コイル等の地上設備の保守体系の実証を行っており、日々の走行試験を通じてデータを取得し、状態監視による保守の効率化の検討等を進めている。これらの成果を踏まえて、新幹線や在来線と同様の検査体系の整備を進めていくとのことだ。

まだ営業開始前の段階のため、リニアの検査基準は確定していない。実証がすべて終了したのちに国土交通省に提出し、具体的な日数などの基準が決まるようだ。

これからのリニア 

では、リニアの開業はいつ頃になるのか。現在の工事の状況と今後の予定を考えると、やはり未着工の静岡工区次第であろう。静岡県とJR東海の間で、大井川の水問題などが解決しなければ、着工ができない。

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自然災害の多い日本では、地震や台風などの被害が毎年のように起きている。災害によって、もしも東京、名古屋、大阪の3大都市を結ぶ交通が寸断されてしまったら、その影響は計り知れない。

そのためにも、東海道新幹線のバイパスとしても考えられるリニアの存在は、極めて重要である。リニアの開業は日本の未来を左右する。すでにリニアの技術は完成している。あとは問題を解決し、「開業させるだけ」なのである。近未来の乗り物リニアの本領発揮となる日が、1日も早く訪れることを願う。

渡部 史絵 鉄道ジャーナリスト

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わたなべ・しえ / Shie Watanabe

2006年から活動。月刊誌「鉄道ファン」や「東洋経済オンライン」の連載をはじめ、書籍や新聞・テレビやラジオ等で鉄道の有用性や魅力を発信中。著書は多数あり『鉄道写真 ここで撮ってもいいですか』(オーム社)『鉄道なんでも日本初!』(天夢人)『超! 探求読本 誰も書かなかった東武鉄道』(河出書房新社)『地下鉄の駅はものすごい』(平凡社)『電車の進歩細見』(交通新聞社)『譲渡された鉄道車両』(東京堂出版)ほか。国土交通省・行政や大学、鉄道事業者にて講演活動等も多く行う。

 

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