ユニコーンのブームはどこまで行くのか? 再びITバブルが弾ける懸念

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評価額に見合う価値があるのか

「いずれバブルは、はじけるだろう。『成層圏』に届くかのような評価額に見合う価値があるかどうか。それが問題だ」

今年1月、米『フォーチュン』誌がユニコーン企業として挙げた世界のベンチャーは80社超。ユタ州ソルトレイクシティのVC、シグナルピーク・ベンチャーでマネージングディレクターを務めるブランドン・ティッドウェル氏いわく、それでも、ユニコーン企業はベンチャーの「ごく一部」にすぎない。

「だが、10億ドル未満の企業は成功できないという『誤った前提』が生まれつつある。ユニコーンをめぐるメディアなどの大騒ぎのせいで、もっと小規模のベンチャーが素晴らしいイノベーションや価値を生み出しても、影が薄くなってしまう」と、同氏は警鐘を鳴らす。

ユニコーン増加の裏に株高やITブームがあるのは確かだが、ティッドウェル氏によれば、ベンチャーのIPO先送り傾向が強まっていることが多いに影響している。   

「3~5億ドルで上場する従来のモデルは、もはや過去の話だ」(同氏)。IPOまでにできるかぎり評価額を増やすことが、上場後のより大きな成功につながるという認識に拍車がかかっている。

ユニコーン・ブームは今後も続くのか――。デュフール氏やサンワルCEO、ティッドウェル氏の答えは「イエス」だ。米国経済によほどのことがないかぎり、ブームが減速する理由は見当たらないという。

一方、キンセラ氏は、「風船ガムが大きくなりすぎてバンと割れるように、(ユニコーン・ブームも)ある時点で一気に下火になる」と警告する。同氏によると、ユニコーンが流動性を獲得するには二つの道しかない。上場するか買収されるか、だ。

しかし、15年前、「実体」のないIT企業を上場させ、バブル崩壊で懲りた金融機関は公開引き受けに二の足を踏むはずだと、キンセラ氏は指摘する。既存業界の総評価額を上回るほどに巨大化したベンチャーを買える企業も、まれだ。

空前のユニコーン・ブームも、いずれは終わりを迎えるバブルなのか――。

肥田 美佐子 ニューヨーク在住ジャーナリスト

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ひだ みさこ / Misako Hida

東京都出身。『ニューズウィーク日本版』編集などを経て、単身ニューヨークに移住。アメリカのメディア系企業などに勤務後、独立。アメリカの経済問題や大統領選を取材。ジョセフ・E・スティグリッツなどのノーベル賞受賞経済学者、「破壊的イノベーション」のクレイトン・M・クリステンセン、ベストセラー作家・ジャーナリストのマルコム・グラッドウェルやマイケル・ルイス、ビリオネア起業家のトーマス・M・シーベル、ジム・オニール元ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント会長(英国)など、欧米識者への取材多数。(連絡先:info@misakohida.com)

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