いつ開業?「臨海地下鉄」晴海・都心直結実現なるか 整備費は巨額、TX接続や羽田空港直通構想も

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事業計画案は、今後の検討事項として秋葉原から東京への延伸構想があるつくばエクスプレス(TX)や羽田空港への接続も挙げている。

TXとの接続は、2016年の交政審による答申にも「直通運転化等を含めた事業計画について検討が行われることを期待」との文言が盛り込まれている。また、羽田空港への接続は中央区が2021年度に実施した調査で、りんかい線経由で羽田空港と新木場方面を結ぶ想定の、JR「羽田空港アクセス線」臨海部ルートに乗り入れた場合の検討を行っている。

区の調査は都の事業計画案と駅位置やルートが異なるため単純比較はできないが、新銀座―国際展示場間のみ整備した場合の費用便益比が1.4なのに対し、TXと直通する場合は2.3、TX・りんかい線双方と直通した場合は2.1との検討結果だ。

りんかい線の国際展示場駅
りんかい線の国際展示場駅。中央区は臨海地域地下鉄と同線の直通を求めている(記者撮影)

同区の山本区長は事業計画案の発表を受けたコメントで、都による今後の計画深度化にあたっては「つくばエクスプレスおよびりんかい線との相互直通運転が必須であると考えている」と述べている。区の担当者も、TXやりんかい線に直通することで「さらに利便性や需要が高まり、費用便益比の面でも有利になる」との考えを示す。

「まずは地下鉄をしっかり検討」

同区はTXの東京延伸を求める同線沿線の自治体とも連携を図っており、これまで5回開いている地下鉄整備の「推進大会」には、千葉県流山市や柏市の市長も参加したという。区の担当者は「都には(区の)検討結果を示して地下鉄整備の要望を続けてきた。今後はTXやりんかい線とつないでほしいという点を訴えていきたい」と話す。

臨海地下鉄推進大会
2020年の「都心・臨海地下鉄新線推進大会」の様子。大会は2018年から毎年開催している(記者撮影)

一方、都は「TXとの接続は2016年の答申で触れられてはいるが、同線の延伸自体は臨海地域地下鉄とは別のプロジェクトに位置付けられており、まずは地下鉄をしっかり検討することが重要」(都市整備局の担当者)との考えだ。事業計画案で羽田空港への接続について触れた点についても「中央区の意向を受けたわけではなく、都の検討会で独自に検討した結果」と説明する。いずれにせよ、TXや羽田空港方面への接続が今後の検討課題であることは違いない。

動き始めた臨海地域地下鉄構想。都は今後、調査の精度を高め、整備スキームや事業主体についての検討を進めていくという。開業時期は未定だが、地下鉄整備によって交通の不便さという「弱点」が克服されれば、臨海部の開発がさらに進む可能性は高いだろう。

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小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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