いつ開業?「臨海地下鉄」晴海・都心直結実現なるか 整備費は巨額、TX接続や羽田空港直通構想も
臨海部の勝どきや晴海地区は、距離的には銀座や東京駅周辺などの都心部に近いものの、直結する公共交通機関は路線バスのみだ。数少ない鉄道駅には利用が集中し、都営地下鉄大江戸線の勝どき駅は2021年度の1日平均乗降客数が約7万4000人と、同線の駅では新宿駅、大門駅に次いで3番目に多い。開業以来利用者数の増加が続き、混雑対策としてホームの増設工事も行った。
臨海地域地下鉄の検討は、中央区が2014年度に開始。2016年に交政審がまとめた今後の東京圏の鉄道整備指針を示す答申では、24路線の新線プロジェクトの1つに位置づけられ、事業性には課題があるとしつつも「十分な検討が行われることを期待」との方向性が示された。その後、2021年の地下鉄網整備に関する答申では「事業化に向けて検討の深度化を図るべき」とさらに踏み込んだ表現となった。
都は答申を受け、同年9月に国交省や有識者らによる検討会を設置し、事業計画について議論してきた。今回のタイミングで計画案を公表した理由について、東京都都市整備局都市基盤部交通企画課の担当者は「検討を進めてきた中で一定の形がまとまったため」と話す。
現時点で開業時期は未定
現時点で開業時期の目標は決まっていない。同地下鉄は臨海部の将来像について都がまとめたビジョン「東京ベイeSGまちづくり戦略2022」の中で「2040年までの実現を目指す取り組み」に位置づけられているが、都市整備局の担当者は「鉄道事業としての(開業時期などの)スケジュールは未定」と説明する。
整備には莫大な費用がかかる。都の事業計画案では、概算事業費は約4200億~5100億円だ。一方、中央区がまとめた2021年度の調査報告書では2790億~3870億円との想定で、金額に開きがある。この点について都市整備局の担当者は、「中央区の検討による試算とは時点も異なるので単純比較はできず、(都の試算は)現時点で一定の精度があるものと考えている」との見解を示す。都の計画案は、区の検討案より駅数も1つ多い。
ただ、事業費はほかの地下鉄新線計画と比べても高額さが際立つ。例えば、2030年代半ばの開業を目指す東京メトロ有楽町線・豊洲―住吉間約5km延伸の総事業費は約2690億円だ。この差については、「(臨海地域地下鉄は)一から建設する路線であり、既存の路線を延伸するのとは条件が異なる」(同担当者)と説明する。
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