クルマのDX化「ソニー×ホンダ」の目論見はなにか 「XR」が創り出すクルマと移動の新たな価値

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後部座席に乗る人に、新たなエンターテインメントを提供するもので、具体的には現実世界とVRを連動させ、現実世界の位置と結びつけたコンテンツにより、新たな乗車体験を創出する。

アウディ×ホロライドのコンテンツイメージ(写真:Audi)

『ポケモン GO』に代表される“位置ゲー厶”というゲームジャンルがあるが、それらよりも目の前に広がるコンテンツ量がリッチかつリアルタイムで、高い没入感をもたらすようなイメージだ。

車内でコンテンツを見るというと、クルマ酔いを心配する方もいるかもしれない。ホロライドによれば、ステアリング、ブレーキ、加速度のデータを利用し、ヘッドセットで見ているものと、クルマの動きをほとんど遅延なくマッチングさせることで、クルマ酔いを大幅に軽減することができるという。

激化する「可処分時間の奪い合い」

ソニー・ホンダモビリティとホロライドの事例から見えてくることの1つめは、XR(クロスリアリティ=VR、AR、MRの総称)による「移動と娯楽の両立」の可能性である。

酔わずに車内の時間を楽しむことができれば、景色を見たり同乗者と話したり、仮眠するくらいしかやることがなかった退屈な車内空間が、一変するかもしれない。2つめは、“可処分時間の奪い合い”が、移動中の車内空間にまで侵食してきている点だ。

ソニー「VISION-S 02」のインテリア(写真:ソニー)

可処分時間の奪い合いは、スマホの普及を機に一気に激化した。昭和の時代、リビングの中心にはテレビがあった。平成になると携帯電話を一人ひとりが所有するようになり、スマホの普及によって手のひらサイズのディスプレイを介した娯楽は爆発的に増加した。

電車に乗っている人を見わたせば多くの人がスマホをさわっており、中吊り広告は以前より見られなくなった。飛行機には機内Wi-Fiがあり、最低限のWebブラウジング程度なら可能だ。

クルマにも通信機能が備わりつつあり、車内でWi-Fiを使えるようになってきた。ただし、現状の使われ方は、タブレット端末やNintendo Switchなどの携帯ゲーム機を接続する程度に限られている。

一方で、移動そのもののニーズはこの先、日本国内では減少傾向になっていくと筆者は考える。移動のニーズが減少すれば、新車販売へも影響を及ぼす。なぜ今後国内の移動ニーズは減少に向かうのか。理由は4つ。

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