漱石「こころ」学ばず「高校国語実用シフト」の功罪 2025年の共通テスト試作問題はデータ照合中心

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難関私立大学に絞っても、青山学院大学や中央大学の複数学部では現代文だけでの国語受験が可能だ。中堅、下位大学としては学生を集める苦肉の策でもある。ある中堅大学の教員は、「古典をなくして入試の難易度を下げないと、受験生が集まらない」と明かす。

言葉に対するデリカシーが欠けている

国語教育に詳しい日本大学の紅野謙介特任教授は、一連の国語教育をめぐる変化についてこう指摘する。「教育や入試の内容は社会的な広がりの中で変えていくべきで、文学ばかりやる必要はない。ただ、試作問題を見ても言葉と情報を混同しており、言葉に対するデリカシーが欠けている。こうした教育を続ければ、日本語の持つ豊かさが失われていくだろう」。

実用に偏った教育の問題点は、「文学軽視」といった単純なものではない。国は国語科に、AI(人工知能)の発達など予測困難で複雑な社会に主体的に関われる力の育成を求める。だが、その力が本当に培える教育とは何か、いま一度問われるべきだ。

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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