漱石「こころ」学ばず「高校国語実用シフト」の功罪 2025年の共通テスト試作問題はデータ照合中心
現場では、現代の国語で小説も教えたいというニーズが根強い。それを受けて教科書会社の第一学習社は、国語総合で定番だった小説教材を掲載した現代の国語の教科書を出版、今年度の採択率は約17%とトップだった。
だが、これでは本来の科目の趣旨から乖離してしまうと危惧した文科省は、昨年8月に「現代の国語」では原則小説を扱わない、と明示する通知を発出。これを受け東京都の教育委員会は、多くの学校がすでに次年度の教科書を決めた9月に入って「第一学習社の教科書から変更を希望する場合は連絡を」と周知することに。
都教委はあくまで事務的な連絡だというが、現場の教員たちは上から「本当にその教科書を使うのか」とただされたと感じ、実際に教科書を変更した学校もあった。
小説をめぐる変化は高1に限らない。高2、高3は選択科目として「論理国語」「文学国語」「国語表現」「古典探究」(各4単位)の中から科目を選択するが、国の指針や入試を意識してか、多くの学校で「論理国語」と「古典探究」の2つが選択されると予想される。そうなると、高2以降は小説を正面から扱う授業がなくなる。
米国は徹底的に文学教育
国語教員の野津将史氏が教鞭を執る慶応義塾高校でも、高2で「古典探究」、高3で「論理国語」を選択する予定だ。「『論理国語』で幅広い評論文を扱えるのはとてもいい。ただこれまで長く2、3年生の定番教材だった夏目漱石『こころ』や森鷗外『舞姫』などの小説を面白いと思えるまで学ぶのには意味がある。『こころ』は夏休み中に読みなさい、という扱いになるのは少し寂しい」。
野津氏は米国駐在員の子女などが通う慶応義塾ニューヨーク学院長を務めた経験があるが、「米国の国語(英語)は徹底的に文学教育だった。そこまでいかずとも、多様な教材に触れるべきだ」。
一方、大学ごとで独自に課す2次試験で静かに進むのが、国語で古文、漢文を出題しない風潮だ。駿台予備学校進学情報事業部の石原賢一氏はこう指摘する。「かねて、難関国立大学を除いて2次試験で漢文が出題されるのはまれだった。それが今、古文もなくして現代文だけで受けられる大学が増えている」。
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