ある日、堀合さんは衝動的に実家から飛び出してしまう。母親が慌てて追いかけたが、堀合さんは「こっちへ来るな!」と大声で叫びながら走っていった。通報で警察官に保護され、警察署に連れていかれた。そこでもつじつまが合わない内容を話し続けたため、手続き後、精神科病院へ搬送され、閉鎖病棟の保護室(隔離された個室)に収容された。
保護室では病状による気持ちの興奮を鎮めるための時間を過ごし、自殺の可能性があるため部屋には何も持ち込めない。堀合さんの部屋にも布団とトイレしかなかった。
薬の鎮静効果で、堀合さんは入院2週目ぐらいまでは体が猛烈にだるく、いつも眠く、ベッドに横たわっていたという。しばらくすると閉鎖病棟の5人部屋に移ったが、同室の人は全員1年以上入院していて、10年、20年以上の人もいた。このときの入院は2カ月だった。
退院後は服薬しながら順調に過ごしていたが、副作用で体がだるくなることから医師に相談せず薬の量を減らした。統合失調症は患者が勝手に薬の量を調節したり、飲むのをやめてしまったりすると再発しやすい。やはり、3週後ぐらいから混乱と妄想が起こり始めた。両親が堀合さんを病院へ連れて行き、6年半ぶり、2回目の強制入院が決まった。このときは、家族の同意による医療保護入院だった。
「普通の入院」かなわず強制入院
3回目の強制入院(医療保護入院)も薬を飲まなくなったことが原因だった。4回目は主治医のもとで薬の量を段階的に減らしていったが、途中で処方量が少なくなりすぎて症状が悪化した。堀合さんから「入院(任意入院)させてほしい」と頼んだが、強制入院(医療保護入院)になった。
最後の退院から8年目。堀合さんは現在、実名で講演をするかたわら、政策秘書の仕事をしている。服薬も適切に続けていて健康な状態を維持している。この間、精神医療について学んだり周囲と議論したりしたことで、日本の現状に対する疑問や改善すべきこと、社会に訴えたいことが多くなった。なかでも強制入院には強く疑問を感じていて、とくに3、4回目の強制入院の決定には、今でも納得がいかないという。
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