ふるさと納税4位の町が贅を凝らす返礼品の中身 寄附金額はスタート時から6000倍超に膨張

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急拡大を遂げた白糠町のふるさと納税実績。棚野孝夫町長に、ふるさと納税の意義、まちの活性化への展開、今後の展望などを聞いた。

ーーふるさと納税でまち、人はどう変わりましたか。

棚野:従来、北海道では獲るだけ、出荷するだけの一次産業になりがちでしたが、ふるさと納税で寄附者の方の声を通じて、どんな魅力的な食材を提供できるのか、生産者がそれぞれに考えて取り組むようになりました。その結果、生産や加工が”おしゃれ”になり、付加価値の高いものが生まれるようになりました。現在はすべての一次産業が新たな可能性にチャレンジしています。これも寄附者のみなさまや関係者のサポートのおかげだと思っています。

ーーふるさと納税の寄附金は経費を除いた4割程度が自治体に残ります。2021年度は100事業に約10億円を活用したようですが、まちづくりのポイントはどこにあるのでしょうか。

棚野:18歳までの医療費無料化、保育料の無料化などの子育て支援施策、移住・定住希望者向けには新築用地として町有地約100坪の無償提供、新築住宅向け固定資産税の減額などを行っています。直近のふるさと納税寄附金の活用例としては、小中学校統合事業があります。白糠小学校と白糠中学校を統合して、町内2校目となる9年制の義務教育学校として『白糠町立白糠学園』を2022年8月に開校しました。

ーー子育て支援や移住・定住政策にも力を入れています。

棚野:この4年間で62世帯、199人が移住されてきました。そのうち中学生までのお子さんが98人です。約半分が近隣自治体からで、その他は札幌市、帯広市、函館市など。道外は全体の19%で、東京都や神奈川県、石川県などからも移住されてきています。

白糠町の人口のピークは昭和35年ごろで約2万3000人でした。炭鉱があった時代です。それから60年以上経ち、炭鉱は閉山し、白糠の人口は7000人台になっています。この先のビジョンですが、人口は6000人から7000人で、働く人が3500人から4000人といったまちづくりができればいい。無理に人口を増やすのではなく、ある程度の規模のなかで身の丈にあった「幸せなまち」を目指したいと思っています。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログも執筆。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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