G20首脳宣言に見る「綱渡り」の国際協調主義 求心力失いバラバラになる世界をどう止めるか

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アジアで首脳外交が繰り広げられている中、エジプトで開催されていた国連気候変動会議(COP27)にも大国間対立の余波が及び、今回も最後までもめた。

大国間の対立が激化し全体を取りまとめることができなくなれば、各国がそれぞれ国益の追求に奔走する。その結果、国際社会が共通して直面するインフレ、経済の混乱と景気の低迷、食糧不足と飢餓や貧困、エネルギー不足などの共通の問題に足並みをそろえて対処することが難しくなっていく。世界はこれからしばらくの間、試練の時代に直面しそうだ。

状況を改善させるために必要なこととは?

これをどうやっていい方向に向かわせるか。アジアでの首脳会議が終わると、各国首脳らはそれぞれの国に戻る。そして、インフレ対策や雇用問題など数多くの内政問題に追われる。国によっては激しい権力闘争が待ち構えているかもしれない。岸田首相も帰国直後に、不祥事を起こした閣僚の更迭を決断した。引き続き国会運営や低支持率などに頭を悩まされるだろう。

どの国の首脳も世界規模の問題に注ぐ時間とエネルギーは限られているうえ、ポピュリズムが広がる時代ゆえにその傾向は強まっている。一方で視野を広げると国際社会の状況悪化はますます進んでいる。内政と外交が直結する時代だから国際協調体制の崩壊は直ちに内政に悪影響を与え国政の運営が滞ることになる。

各国首脳は可能な限り、首脳外交の頻度を上げていかなければならない。危機の時代だからこそ、外交空間を活性化させる必要がある。

薬師寺 克行 東洋大学教授

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やくしじ かつゆき / Katsuyuki Yakushiji

1979年東京大学卒、朝日新聞社に入社。政治部で首相官邸や外務省などを担当。論説委員、月刊『論座』編集長、政治部長などを務める。2011年より東洋大学社会学部教授。国際問題研究所客員研究員。専門は現代日本政治、日本外交。主な著書に『現代日本政治史』(有斐閣、2014年)、『激論! ナショナリズムと外交』(講談社、2014年)、『証言 民主党政権』(講談社、2012年)など。

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