ヒロック直伝、「どんな力を育てたいのか」で変わる最適な探究学習の形 テーマ、コンセプトから始まる探究学習の実践

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2022年度から高等学校では、新しく学習指導要領に盛り込まれた「総合的な探究の時間」の授業が始まっている。すでに小学校や中学校でも「総合的な学習の時間」において探究学習に取り組んでいるが、この自ら問いを立てて課題解決に取り組む探究学習は、まだ始まったばかりとあって実践に悩む学校、先生も多い。ここでは探究学習に力を入れて取り組むヒロック初等部・校長の蓑手章吾氏に、その目的や押さえるべきポイント、また子どもたちの育ちについて教えてもらった。

「え、これも探究学習なの?」と思えるようなものも多い

高等学校では今年度より、「総合的な学習の時間」が新たに「総合的な探究の時間」として新設されました。また、選択科目としても「日本史探究」や「世界史探究」「古典探究」「理数探究」など、「探究学習」と呼ばれる授業が重視されてきています。

一方で教育現場はというと、教員の働き方改革をサポートするトモノカイが全国の高校で探究を指導している360人の教員に調査したところ、実に半数が「生徒の質問に答える時間や人脈がない」と答えています。探究学習を経験したことのない教員も多く、不安を感じながら何とか応えようと努力している教員の割合はさらに多いことでしょう。

私もかねて、津々浦々の「探究学習」と呼ばれる実践を学んだり実践してきましたが、「え、これも探究学習なの?」と思えるようなものも多く、その裾野の広さに戸惑うこともあります。

私がここで強調したいのは、「何が真の探究学習なのか」ということではありません。探究学習によって「どんな力を育てたいんだっけ?」ということを明確にして実践を作ったり、あるいは選んだりしましょう、ということです。

皆さんは子どもたちに、なぜ探究学習を経験させたいのでしょう? 「何となく、探究学習はいいらしい」「やらなきゃいけない」「社会に出てから役立つ」「偏差値が上がる」「調べる力がつく」「自分で学ぶ力がつく」「将来の幸福につながる」など、人によって求めるものが違いそうです。一言で「探究学習」と言っても、その目的によって、最適な探究学習の形は変わってきます。

大切なことは、「とにかく子どもたちに探究学習を体験させなきゃ」ということではなく、探究学習によって「どんな力が育ってほしいのか」を、親を含めた大人側がしっかり持っておくことだと思います。

蓑手章吾(みのて・しょうご)
HILLOCK(ヒロック)初等部 校長
公立小学校で14年勤務した後、2021年3月に東京・世田谷にオルタナティブスクール、ヒロック初等部を創設、22年4月に開校。専門教科は国語。特別支援学校でのインクルーシブ教育や発達の系統性、学習心理学に関心を持ち、教鞭を執る傍ら大学院にも通い、人間発達プログラムで修士号を取得。特別支援2種免許を所有。プログラミング教育で全国的に有名な東京・小金井の前原小学校では、研究主任やICT主任を歴任するなどICTを活用した教育にも高い関心と経験を持つ。著書に『子どもが自ら学び出す!自由進度学習のはじめかた』(学陽書房)、共著に『before&afterでわかる!研究主任の仕事アップデート』(明治図書)、『知的障害特別支援学校のICTを活用した授業づくり』(ジアース教育新社)、『個別最適な学びを実現するICTの使い方』(学陽書房)などがある
(撮影:今井康一)
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