残念なマーケティング担当者に見られがちな特徴 社内調整の高い人材を置けない会社は考えが甘い

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取引経験のあるBtoB企業を思い浮かべて、「ロゴのデザインが良くなったのでA社からB社に乗り換えた」「サイトの色調が変わったので取引量を増やした」という経験があったかどうか振り返ってみてほしい。察しの通り、「デザイン刷新」で顧客が喜ぶことはないと考えてよく、これのおかげで「顧客視点」への変革が進むこともない。

例に挙げた3つの施策はいずれも、他部署との利害関係が生じにくく、権限の十分に与えられなかったマーケティング部署にも取り組みやすい。また、作業を淡々と進めて完了すれば、それ自体を成功したプロジェクトのように仕立て上げて喧伝できてしまう。

加えて、ツール・データ基盤・デザインのいずれも、トレンド感のある関連のバズワードが生まれては消えていく領域である。バズワードのお祭り騒ぎに乗ってしまうと、ベンダーに呼ばれてカンファレンスに登壇したり、それがメディアに取り上げられたりと、ともすれば先進企業になったかのような錯覚すらできてしまう。

顧客視点にコミットできる権限と人材を揃える

ところが、事前に目的や仮説を立てることなしに、加えて各部署との調整もなしに、前述のような施策が売り上げ増加やコスト削減に貢献することはない。また、当然のことながら、顧客視点への改革にもまったくつながらない。こうして他の事業部の目線からすれば、事業とは距離のあるところでよくわからない横文字の施策をやっている、浮世離れしたマーケティング部署ができあがってしまう。

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顧客対応を複数の部署や担当者で分担すること自体は、組織が大きくなれば仕方のないことだ。また、あらゆる組織設計には一長一短があり、完璧な組織設計がないのもまた事実である。

ところが、本来のマーケティングが「顧客視点」へのコミットであるとすれば、担当の部署が組織を横断的に監査する権限を持ち、社内調整力の高い人材を揃えていることは、必須の要件なのである。

特に社内調整力の高い人材というのは、さまざまな部署において高いパフォーマンスが出せる。故に、各所からの引き合いが強い人材であることが多い。このような人材を、マーケティング部署にあてがえないということは、組織設計に責任を負う経営者のマーケティングへの考え、ひいては顧客の心地よい体験を実現しようという「顧客視点」への考えが甘いといえる。

垣内 勇威 WACUL代表取締役

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かきうち ゆうい / Yui Kakiuchi

東京大学経済学部卒業後、株式会社ビービット入社。大手クライアントのWeb改善コンサルティングに携わる。2013年、株式会社WACUL入社。
データ分析から改善提案や成果の測定といった「Webマーケティングの売上拡大のPDCA」をAIが支援するSaaSツール『AIアナリスト』を生み出す。現在は取締役CIO(Chief Incubation Officer)兼WACULテクノロジー&マーケティングラボ所長として、さらなるノウハウの構築と新規プロダクトの創出を担当。3万サイト超の分析とユーザ行動観察から得たデジタルマーケティングの知見を、研究所レポートやTwitter、講演・セミナーなどで発信し、その痛快かつ明快な語り口で人気を博す。

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