残念なマーケティング担当者に見られがちな特徴 社内調整の高い人材を置けない会社は考えが甘い

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組織設計の失敗によって他部署への影響力を行使できないマーケティング部門がたどり着くのは、自分たちの部署だけで完結する「やった感のある自己満足の仕事」の量産だ。典型的には、「ツール導入」「データ統合」「デザイン刷新」の3つが挙げられる。

新しい「ツール導入」は、マーケティング活動を始めるにあたって一定は必要になるもので、ツール自体が悪いというわけではない。一方で、導入の目的や活用方法、業務への組み込み方を考えることなしに、とかくツールさえ導入すれば何かができるようになるというのは、都合の良い幻想である。

社内に無用の長物として眠ってしまうのが関の山

ベンダーの営業文句に乗せられるままに導入しても、目的と仮説がない場合、社内に無用の長物として眠ってしまうのが関の山だ。せっかく導入したツールが、社内でまったく使われなくて困っているという話や、導入成果が出ているのやら、そもそも効果測定の方法から見当がつかないという話など、困った相談を受けることは枚挙にいとまがない。

同じく「データ統合」も、社内に散らばったリソースを集約するという大義名分のもと、マーケティング部門の実績として標榜されやすい施策である。これもまた、データを集める目的と、活用方法の仮説がないままに進めてしまえば、何の成果も生まない。

データ分析はふつう、演算の部分を機械に丸投げしてしまえるとしても、設計の部分には人の思考が挟まる必要がある。どのようなことを検証したいかを定め、必要な集計を定義して初めて、必要なデータが特定される。これが奇跡的に、社内のどこかにすでにたまっているデータと一致する可能性は限りなくゼロに等しい。偶然たまっていた顧客データを集約する「データ統合」からは、役立つ使い道や結果が出てくることがないのは当たり前である。

最後に「デザイン刷新」もまた、やった感のある施策として好まれやすい。具体的には、Webサイトのデザインリニューアル、ロゴのリブランディング、カタログのデザイン刷新などが該当する。これらはコストがしっかりとかかる一方で、成果を測定しづらい施策ゆえに、成否そのものがうやむやにされることが多い。

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