残念なマーケティング担当者に見られがちな特徴 社内調整の高い人材を置けない会社は考えが甘い

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この組織の正しい名称は、あくまで「リード獲得」や「プロモーション」であり、位置づけはマーケティングを担う部門の1ユニットだ。本来の意味でのマーケティングをミッションに持つ組織は、商談中の顧客と接する営業も、購入後の顧客と接するカスタマーサポートも、それぞれ1ユニットとして束ねるような組織だ。そうであってはじめて、全社の活動を顧客視点で再設計するような大仕事が果たせる。

部門横断組織に他部署との調整力を与えない

こうしたことは、部門横断でマーケティングを担う組織を立ちあげるときに、よく見られるパターンだ。こういった組織には「マーケティング本部」や「営業企画本部」という名称がつけられていたり、デジタルに特化して「DX本部」「CRM推進本部」「デジタル統括本部」などという名称がつけられていたりする。

先ほどの例とは異なり、マーケティングは全社で取り組まねばならないもの、と認識されている点は、一歩前進といえるかもしれない。しかしながら、このアプローチはこれまでことごとくが失敗に終わってきた。失敗の原因は、ひとえにマーケティング組織に付与された社内調整力が脆弱であることに尽きる。

「顧客視点」への変革は、短期的な売り上げ増加が起こりにくい一方で、個別の担当分野で取り組みを積み上げてきた部署に対して、全体最適の観点で別のことを優先してもらったり、やり方を変えてもらったりする必要がある。たとえば短期売り上げにコミットしてきた営業部門からすれば、ぽっと出の部署からどう見ても面倒くさそうな仕事を提案されたと感じるため、当然のように反発したくなる。

そうであれば、この新しい横断部署に与えられる権限は、他部署と対等ではまったくもって足りない、ということになる。また権限だけでなく、社内からの人望が足りない場合も即失敗する。

この部門に求められる仕事は、顧客視点を持って、他部門を説得・調整することだ。社内の人間関係を理解し、時には泥臭く人間関係を築き、時にはファクトを駆使して正面突破しなければならない。

しかし得てして部門横断で立ち上げられる組織は、外部から「マーケティング」や「デジタル」の専門家を集めることに執心し、社内の人間関係に詳しい生え抜きの人材がいないか少数にとどまることが多い。結果として、ミッションの完遂に最も重要な「社内調整力」が極めて弱い組織になることが多い。

社内調整に必要な権限も人望も欠いたマーケティング横断組織は、各部署から単純作業を押し付けられるだけの「便利屋」になり、集めた専門知識を持ち腐れさせることになる。

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