企業の嘘見抜くZ世代に支持されるブランディング 大企業だからという理由だけでは信頼されない

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商品購入においては、売り手と買い手の関係と言うよりも、支持するブランドへの投票行為と捉えているとも言えます。購買したものの写真をSNSで共有するのが前提になっているので、自分が購入することがすなわち誰かに推薦しているという感覚があるからです。信頼性に低いブランドに投票することは、「いいね!」がつかないだけでなく、仲間からの信頼を失うことに等しいということなのです。

Z世代の次のアルファ世代でも同様の傾向は見られるでしょう。したがって、未来のユーザーを獲得するためには、Z世代のこうした性向をよく把握したブランディングが必要だと言えます。

Z世代が消費者の一大勢力として台頭してきたのと並行して、大手企業だから信頼されるとは限らなくなってきました。経営コンサルティング会社のA.T. カーニーが先進国を対象に2017年5月に行った調査では、「大手企業・ブランドへの信頼がほとんど/まったくない」と回答した人の割合が、軒並み50%を超えています。5年前は3割から4割程度だったことを考えると大きな変化が起きていると言えるでしょう。

違う見方をすれば、ベンチャーや中小企業でも信頼されるブランドを築けるチャンスが広がったと言えます。規模や歴史だけが信頼性を決定づける要素ではなく、その企業ならではの社会的な存在意義を掲げ、それをどれだけ実際に行動に移せているかが見られている時代になっているのです。

ブランディングは経営そのもの

最後に、少子化により人材採用が困難になっていることについて触れましょう。少子化の中で、いかに優れた人材を確保していくかは多くの企業の中で避けられない問題となっています。特に、中小企業ではより深刻なテーマです。その助けとなるのがブランドの構築だと考えられます。

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たとえば、これからの世代を担うZ世代では、消費活動は、「売り手と買い手の関係と言うよりも、支持するブランドへの投票行為だ」と述べました。これは就職先選びにも言えます。大企業だから信頼するとは限らないZ世代は、就職先を企業規模だけで選びません。しっかりとしたブランディングができれば、中小企業でも若い優秀な人材を採用できるチャンスが以前よりも広がっているのです。

ブランディングが必要な4つの理由について見てきました。まとめると、作れば売れる時代はとっくに終わりを迎え、商品そのものの差別化さえもままならない時代に突入しました。似たような商品があふれかえっている上に、商品情報も増え、ユーザーは商品選択に大きなストレスを抱えています。

そうした中、ブランドを確立することは、商品の選択を容易にすると同時に、これからの消費を支えていくZ世代以降の世代から支持される必要条件になりました。

若い世代の支持を得るということは、収益を増やすことはもちろん、若い優秀な人材を獲得するのも有利になることでもあります。そう考えると、ブランディングは経営課題を解決する手段であり、経営改革そのものと言うことができるのです。

金子 大貴 ブランディングディレクター

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かねこ だいき / Daiki Kaneko

株式会社 大伸社コミュニケーションデザイン チーフ ブランディングディレクター。2009年、株式会社大伸社入社。大手上場企業から中小企業まで、企業のリブランディングプロジェクト、新製品のコンセプト開発、ブランド浸透戦略立案などの幅広い業種業態でのブランディング支援を実施。

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一色 俊慶 クリエイティブディレクター

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いっしき としのり / Toshinori Isshiki

株式会社 大伸社コミュニケーションデザイン 代表取締役CEO クリエイティブディレクター。2001年、株式会社大伸社入社。コピーライター、マーケティングプランナーを経て2020年より現職。住宅設備や生産設備、医療機器メーカーなどBtoB企業のブランディングからマーケティング戦略を統合的に支援。

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