総額1000億円、西武HDが攻勢「所沢再開発」の勝算 球場、遊園地、大型商業施設など投資相次ぐ
この計画の遂行に当たって西武HDが選んだパートナーが住友商事である。大手総合商社として名高いが、「当社のルーツは1919年に設立された不動産会社の大阪北港であり、不動産事業は祖業として注力事業の1つ」と、住友商事の為田耕太郎生活・不動産事業部門長が話す。
同社の商業施設の開発では、2011年に神奈川県藤沢市で開業した「テラスモール湘南」が代表例。湘南らしさをアピールする衣料・雑貨店街やフードコートを設けているのが特徴である。グランエミオ所沢も西武HDと住友商事がタッグを組んで手がけた。
「抜群の存在感です」――。為田事業部門長に西武の印象を聞いてみたら、即座にこんな答えが返ってきた。
コミュニティ単位の説明会から個別訪問まで、不動産開発を円滑に進めるためには周辺地域との良好なコミュニケーションは不可欠である。これが一筋縄ではいかない。ビジネスマンなら誰もがその名を知っている大手の不動産会社でも、「よそ者は帰れ」とまったく相手にされないケースもざらにある。
「ベッドタウン」からの脱却
ところが、所沢で西武の名前を知らない者はいない。電車に乗って都心に出るためには誰もが西武池袋線や西武新宿線を利用する。西武の名前を冠したプロ野球チームが地元にあり、西武園ゆうえんちなどのレジャー施設も所沢に多く所在する。グループではないが所沢駅西口には西武所沢S.C.もある。「西武と共同で不動産事業を行います」と言えば、確かに理解は得られやすい。
法制度の整備により2000年代に入って大型のショッピングセンターが全国各地で増え続けている。ただ、施設のレイアウトや店舗構成が似たり寄ったりで地域の独自性が感じられないショッピングセンターも少なくない。為田事業部門長は「オーダーメイドで施設を作り込んでいく」と言い、「所沢らしさ」を出すことを強調する。
では、所沢らしさとは何か。西武HDの後藤高志社長は、「所沢は豊かな自然に恵まれ、都会と郊外の特徴を併せ持つ」と言い、「夜寝るだけのベッドタウンから、暮らす、働く、学ぶ、遊ぶ、という4つの要素を持つ“リビングタウン”に変えたい」と意気込む。新たに建設される商業施設は、リビングタウンを象徴するような存在となる。
約295億円の事業費を投じ、約150店舗が入居する4階建ての建物を建設する。1階は隣接地に市が整備を予定する公園と一体性を感じられるようにして、「緑あふれる空間を創出したい」と西武HDの担当者が話す。2階は「アートやカルチャーに触れて感動できる空間」を目指す。パブリックビューイングなど施設の顔となる空間を設置したいという。3階は子育て世代をターゲットにして家族で時間を過ごせる空間として、ファミリー向けのテナントフロアにする。4階は富士山の見える屋上広場と室内空間が一体となったレストランフロア。映画以外のコンテンツ上映も可能なフレキシブルな映画館も開設したいという。
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