ロシア正教会がウクライナ侵攻を"祝福"する理由 「プーチン政権とのつながり」を池上彰が解説
その後、スイスのジュネーブに本部のある国際機関「世界教会協議会」にロシア正教代表として派遣され、ソ連崩壊直前の1989年まで駐在していました。世界のキリスト教の関係者についての情報収集や、南米で盛んになっていた「解放の神学」(キリスト教とマルクス主義を合体させ、格差のない社会を求める運動)の影響力を強めるように働きかけることが任務だったとされています。
キリル総主教の最近の発言を見ると、「ロシアとウクライナは一体のものだ」という認識を持っているようです。これは、プーチン大統領と全く同じです。ロシアとベラルーシとウクライナはルーツが同じであり、そもそも一体のものなのに、西側によってウクライナが裏切っているという認識なのです。
その背景には、ウクライナ正教がロシア正教から離れて独立したことに対する怒りと恨みが見えます。
ロシア正教会トップがウクライナ侵攻を祝福する理由
2018年12月、それまでロシア正教会に所属していたウクライナ正教会が独立を宣言しました。これはロシア正教会の承認を得ないもので、ロシア正教会のキリル総主教は激怒したのです。
ウクライナ正教会が独立を宣言した後も、ロシア正教の管轄下に留まったウクライナ正教会も多かったのですが、そのうちの一部は、2022年にロシア軍がウクライナを侵攻したことに反発して離脱を宣言しました。
この結果、現在のウクライナは、主に4つの宗教界に分かれています。詳しくは後述しますが、モスクワ正教会の管轄下にあるウクライナ正教会と、2022年に離脱したウクライナ正教会、2018年に独立したウクライナ正教会、それにカトリック教会(東方典礼カトリック教会)です。
東方正教会は、国ごとに独立した正教会が作られますが、ウクライナの場合は、ウクライナが国家として独立する前の1686年、ウクライナの信者はモスクワ総主教の直接の管轄下に置かれることが決まっていました。
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