なぜ日本株は「まだ割安」といえるのか 大手投信フィデリティ運用責任者に聞く

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日本株の現在の株価水準は、投資判断をする際に使うさまざまな指標で見ても、それほど割高ではない。来期で見れば、PER(株価収益率)で約13倍、PBR(株価純資産倍率)でも、1倍を割り込んでいる銘柄が少なくない。

現在の日本の景気自体は好調とは言い難い。だが、企業業績は絶好調だ。すでに2015年3月期決算は、前述した円安の効果も追い風になり、金融を除く東証1部上場企業の最終利益合計額が、過去最高を更新するという見通しも出ており、株価にとってはポジティブな材料がそろっている。

投資先企業を選ぶ際に注目しているのは、グロース、リターン、マネジメントだ。

まず、グロースは企業の成長性。リターンは現在保有しているキャッシュおよび将来得られるキャッシュフロー、そしてマネジメントは優れた事業分野、技術があるかどうか、という意味で捉えてもらって良い。この3点に対して、現在の株価が割安だと思ったら、投資対象候補に入れていく。

ただ、日本はこれから人口が減少傾向をたどるため、国内の事業がどんどん拡大していく状況ではない。したがって、成長性に対して割安な企業を見つけるのは難しい。

したがって、リターンとマネジメントに注目するが、まずは優れた事業分野、技術を有しているかどうかを見る。他の企業にはなかなか真似のできない事業、技術を有している企業は、強い価格決定権を持つ。これが安定したリターンにつながるのは、言うまでもない。

また、それほど優れた事業分野、技術を持っていない企業でも、現在保有しているキャッシュに対して、株価が割安に放置されたままの企業がたくさんある。これから投資するのであれば、この点は非常に注目したいところだ。

キャッシュを溜め込むのは、もはや許されない

今年を通じて、日本の株式市場における最大のテーマは、やはりコーポレートガバナンスだろう。というのも、日本企業はキャッシュを貯め込んでいる。なぜなら、投資する先がないからだ。設備投資するチャンスが限られているため、結果的にキャッシュを貯め込む形になっている。

ただ、コーポレートガバナンスに対する関心が高まるなか、収益を生まないキャッシュをずっと貯め込んでおく状況は、もはや許されないだろう。折しも日本版スチュワードシップコードが導入され、機関投資家は顧客や受益者の投資リターンを拡大させるべく、投資先企業との対話を積極的に行うことを表明している。

そうなれば、投資先企業は機関投資家から、ROEや配当利回りの引き上げを求められるだろう。現在、日本企業のROEは平均で8~9%程度だが、今後、これを2ケタに引き上げる企業が、徐々に増えてくるはずだ。

なかにはアマダのように、「今後2年間は利益の半分を配当に、半分を自社株買いに充てる」というような、思い切った株主還元策を取ってくる企業も出てくるだろう。また、GPIFなどがパッシブ運用をする際のベンチマークである「JPX日経インデックス400採用銘柄が、ROE基準を設けていることも、ROEを引き上げるきっかけになる。

もし、セクター別で注目しているのは何かと問われれば、金融だ。特に銀行、ノンバンクで、ROE重視の戦略を打ち出し、かつ低PBRいう企業に注目している。

鈴木 雅光 JOYnt 代表、金融ジャーナリスト

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すずき・まさみつ / Masamitsu Suzuki

1989年岡三証券入社後、公社債新聞社に転じ、投信業界を中心に取材。2004年独立。出版プロデュースやコンテンツ制作に関わる。著書に『投資信託の不都合な真実』、『「金利」がわかると経済の動きが読めてくる!』等。

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