無名でも「鉄道業界で圧倒的シェア」どんな会社? その製品を車内で見たことがない人はいない

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2020年度の鉄道車両生産額と車両電機品・車両機械部品出荷額の合計は、約6500億円。それに比べれば、車両のラッピングや車内サインの売上などごく些細なものにすぎない。しかし、金額的にはともかく、ラッピングやサインは利用者との接点として、また、企業のブランドとして非常に重要な存在である。

目下の課題は、いかにしてJR西日本以外の鉄道会社からの売上を増やすかということだ。車両メーカーを通じて新型車両向けは安定しているとはいえ、新型車両の生産が今後増え続けるわけではない。

認知度に悩み、品質をアピール

そのため、ほかの鉄道会社の既存車両のリニューアルがビジネスチャンスとなるが、リニューアル時のシール対応は車両メーカーではなく、各鉄道会社が行う。その場合、各社は日頃付き合いがある印刷会社に発注する。大森部長は、「当社は品質には自信があるが、認知度が高くないのが悩み」とこぼす。そこで、新型車両を手がけている強みを生かして、既存車両とサインの統一展開が可能となることを各社にアピールする構えだ。

「たとえシールであっても、一度貼ったら10〜20年は使われるだけの品質が問われる。その意味で我々は、自分たちは部品メーカーだと思っている」と大森部長。鉄道の安全運行に不可欠な部品を作っているという矜持。それが多くの鉄道会社に理解されれば、同社のビジネスはもっと広がるに違いない。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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