PwCあらたのトップが説く「重要なのは人材だ」 世界経済が激変する中での会計ビッグ4の行方

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この20年くらい、サステナビリティ(持続可能性)は企業にとっての社会的責任だと言われてきたが、最近潮目が変わって、サステナビリティこそビジネスの中核、と唱える経営者が増えてきた。そうであれば、それに関する戦略を立案することで、われわれはお役に立てる。

――とはいえ、非財務情報にアプローチしようとしているところが増え、競争は激化していると思います。

競争激化自体はいいことだと思う。ただ、われわれ監査法人は、世界中で独立性を維持するという仕組みを持っているが、他の検証機関が果たして持っているかどうか。実は独立性を維持するために、われわれはものすごく投資を行っている。だから社会的に品質を担保して監査を行うことができる。

非財務情報を監査するには、まず監査基準を運用する経験を積んでほしい。それから監査した結果が適正かどうかを第三者的に評価する仕組み、さらには第三者であるための独立性を担保する仕組みを備えていることが大事だ。

――これから先、どのような人材が必要になりますか。

もちろん、監査業務を担う公認会計士も増やしていくが、非財務情報の分野では、科学の知識や心理学の知見も必要になってくる。そういったさまざまな分野の専門家を育てていくことが肝要だ。加えて、ITの重要性は増す一方なので、デジタルに強い人材もしっかり育成していく。

外部からの採用も強化するが、競争が厳しいため、外部ばかりに頼っているだけではだめ。われわれは新人から代表の私に至るまで、全員が所定の研修を受けて、スキルを磨くよう努めている。

イノベーションを起こすのは人材だ

――ただ人材を育成するだけでなく、その分、顧客へのサポートの質はどう高められていきますか。

2050年のカーボン・ニュートラルの実現など、これから大きな変化が予想される中で、日本企業は生き残っていかなくてはならない。そのためにはイノベーションが欠かせないが、イノベーションを起こすのは有形固定資産ではなく、あくまで人材だ。

だから、人が企業の中で自分の価値をどのくらい発揮できるようになっているかを開示させることによって、企業間の競争を促すことが、日本企業を強くしていくことになる。社員に学ぶ機会をどう与え、どういう目的意識を持たせて、情熱を抱いて働ける環境を整備したのか。日本ではあまり語られてこなかったが、これからはこういうストーリーを前面に出して、投資家にもアピールしていかなくてはならない。

そのため、われわれは監査も非監査も含めて多彩な人材を投入して、クライアント企業が変身するためのお手伝いをしていくことになる。こういう基準が策定されたから、この数値を達成するための内部統制はこうあるべき、ITシステムをこのように作るべきだと。でも、それで終わってはいけない。それが本当に価値があるということをどう説明するのかまで踏み込んでいけるような監査法人になりたい。

加藤 光彦 ライター

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かとう みつひこ / Mitsuhiko Kato

慶應義塾大学卒業後、女性誌を経て、東洋経済新報社に入社。編集局でゲームや電力業界を担当、その後ビジネスプロモーション局へ異動。現在は会社四季報執筆等に従事。

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