PwCあらたのトップが説く「重要なのは人材だ」 世界経済が激変する中での会計ビッグ4の行方
イギリスなどで監査法人に対し、監査部門と非監査部門の分離を求める声が政府当局から上がっている。コンサルティング業務など非監査部門が成長する中、監査部門の独立性を問うているためだ。すでに分離の方向性を打ち出したグループもある。
世界経済がますます視界不良となる中、監査法人はどうあるべきなのか。世界4大会計事務所(ビッグ4)の一角で、プライス・ウォーターハウス・クーパース(PwC)の日本拠点の1つであるPwCあらた有限責任監査法人の井野貴章・代表執行役に、業界の現状認識と今後の戦略について直撃した。
週刊東洋経済11月5日号では「秀才たちの新ヒエラルキー コンサル、弁護士、税理士」を特集。公認会計士や監査法人の今を伝えている。
国際性とIT監査の特徴を生かしていく
――業績の拡大基調が続いています。
直近の2022年6月期の業務収入(売上高)は過去最高だ。監査報酬が順調に伸びていることに加え、非監査報酬もコロナの落ち着きとともに回復してきた。やるべきことをやれば、売り上げはついてくるという考え方をしている。われわれは4大ファームの中ではいちばん小さいが、その代わり、国際性とIT監査という特長を最大限に生かし、国際性やIT監査と親和性の高い企業を中心に、クライアントを増やしていきたい。
ただ、監査人交代というのは企業にとって一大事なわけで、容易にクライアントが増えるわけではない。クライアントと地道なお付き合いを続け、お互いの世界観や大事に思っていることが合致しているとき、「ではあなた方に監査をお願いしようかな」という話になる。まず監査以外の非監査業務をしっかり提供し、クライアントとお互いに理解し合える関係を築いたうえで、監査業務を伸ばしていきたい。
――非監査業務ではどのような領域が伸びていますか。
キーワードは、ガバナンス(統治)とデジタル、および非財務。この3つはいずれ、決算書に反映されることになる。これらに関心を持ち、将来どのように監査していくのかという気概を背負って、取り組まなければいけないと思っている。例えば、二酸化炭素(CO₂)の排出量をどのように決算に反映させるのか、世界中での議論を経て、公認会計士が真摯に検証できるようにならなければならない。
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