ソウル圧死事故直前、通報11件の悲痛な中身 うち4件しか警察は出動しないなぜ

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ソウル圧死事故の現場で鑑識作業を行う科学捜査研究院の担当官(写真・2022 Bloomberg Finance LP)

ソウル圧死事故で警察は、事故発生4時間前から「圧死しそうだ」との最初の通報を含めて計11件の通報を受けたのにもかかわらず、これといった措置をとらなかったことがわかった。市民は事故発生現場近くの通りから危険な状況を警察に通報しながら警察が来ることを要請していたが、国民の生命に責任を負う警察の姿は見えなかった。

ユン・ヒグン警察庁長は2022年11月1日、「市民からの通報を処理する現場の対応は十分ではなかった」と謝罪したが、警察の責任を追及する声はさらに高まりそうだ。

警察庁によれば、事故当日の10月29日午後6時34分時点での通報を皮切りに、事故発生直前となる同日午後10時11分まで合計11件の通報を受けた。最初の通報者は事故現場近くのホテルの横の通りであることを知らせ、「狭い通りにクラブの前に立つ人たちと地下鉄梨泰院駅から来る人たち、通りから出てきた人たちが互いに押し寄せてひしめきあい、圧死しそうな状況。進入路で通行規制をしてほしい」と訴えた。

「圧死しそう」「早く通行規制を」

その後、「人が押し合いへし合いしてケガもしている」(午後8時9分)、「ほとんど圧死しそうな状況」(午後8時53分)、「人がとても多すぎて、まさしく大型事故が起きる一歩手前」(午後9時)など、市民は警察にとても危険な状況にあることを通報した。事故発生直前となる午後10時11分まで通報が続き、市民は警察の規制や措置を要請しながら助けを待っていた。

しかし警察は11件の通報のうち4件で現場に警官を出動させた。6件については電話での聴取のみで終わらせ、残り1件はどう対応したのか不透明なままだ。警察庁関係者は「実際に現場に出てみたが通報者と会うことができず、電話による案内で終わったのかといったことは検察によって明らかにされたこと」と述べた。

事故発生直後、政府の責任を避けた行政安全省の李祥敏(イ・サンミン)大臣と呉世勲(オ・セフン)ソウル市長も、事故発生3日目になってようやく「謝罪したい」と頭を下げた。

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