「大阪の夜景」を観光資源に、近鉄奈良線の新展開 「あをによし」初めての夜間運行、その手応えは?
あをによしは特急車両として活躍した12200系を改造した4両編成で奈良寄りが1号車。この1号車はかつてイギリスの故エリザベス女王が来日した際の御料車がもとになった車両だ。
車内は1・3・4号車が2人用のツインシート、2号車がついたてで仕切られた3~4人用のサロンシート。紫色のメタリック塗装の車体に「花喰鳥(はなくいどり)」と呼ぶ吉祥文様のエンブレム、校倉造をイメージした販売カウンターなど、随所に古都を意識したデザインが施されている。
通常ダイヤでは、基本的に木曜日を除いて、大阪難波―近鉄奈良―近鉄京都間を毎日計6便運行している。このうち奈良線の“絶景区間”を走る時間帯は第1便京都行きの9時台と第6便大阪難波行きの16時台だ。日中は京都―奈良間を2往復する。
初めての夜間運行、売れ行きは?
夜間運行ツアーは、ツインシートは2人1組、サロンシートは3人1組または4人1組で計80人を募集した。旅行代金はツインシート、またはサロンシート4人利用の場合が大人1人8650円、サロンシートが3人利用の場合で同9980円。往復の運賃、特急料金、特別車両料金のほか、弁当代、クラフトビールの瓶1本、土産のまほろば大仏プリン2個が含まれる。
あをによしで初めての試み、はたして実際の売れ行きはどうだったのか。近鉄の担当者、運輸部営業課の有薗裕之さんは「9月12日午前10時の販売開始から約3時間で完売した」と明かす。そのうえで「奈良線は過密ダイヤなので、スジを引く運行課の担当者からすれば『どこへ入れるねん』というところから始まったが、一生懸命考えてくれた。(参加者の)仕事終わりで、夜景が見え、帰りが遅くならない時間帯にしたいという希望にぴったり収めてくれた」と社内の協力に感謝していた。
当日、夕方の帰宅ラッシュで混雑する大阪難波駅のホームにあをによしが入線。わずかな停車時間のなかで参加者の乗車が完了した。発車すると、通勤電車や特急の間を縫って各駅のホームを通過。生駒山地の勾配にさしかかると有薗さんが「ぼちぼち夜景が見えてきます。普段は3~4分で運行するのですが、本日は皆さまに夜景を楽しんでいただくために少し速度を落としております」と車内放送を入れた。
鉄道のプロたちが舞台裏で支えていることもあり、ラッシュ時間帯でも車内にはゆったりとした空気が流れていて、参加者たちは2時間ちょっとの夜の列車旅を満喫したようだった。
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