わずか44日で辞任に追いこまれたトラス前首相。スーナク新首相はイギリスの政局の混乱を収め、市場の信頼に足る財政計画とインフレ対策を両立させるという難題に直面している。
大型減税と規制緩和による経済再建で「第2のサッチャー」を目指したイギリスのリズ・トラス首相は20日、政策迷走による金融市場の混乱と党内外の信用失墜を招き、就任からわずか44日で辞任表明に追い込まれた。トラス政権の経済政策(トラスノミクス)はなぜ失敗に終わったのか。
減税と規制緩和による経済活性化のストーリーは、具体策と説得力に乏しかった。巨額の財政悪化につながるエネルギー料金の凍結と大型減税の発表を先行し、予算責任局(OBR)の財政評価も求めなかったことで、財政規律を軽視していると受け止められた。
イングランド銀行(BOE)が過去の量的緩和で購入した資産の売却(量的引き締め)を開始するタイミングと国債の大幅増発観測が重なり、国債需給悪化に対する不安に拍車がかかった。
国債価格の下落(国債利回りの上昇)により、年金基金の流動性不安が広がった。多くの年金基金は、低金利下で年金の給付水準を確保するため、国債を担保に金融派生商品(デリバティブ)などに投資していた。担保価値の目減りで追加の証拠金の提出が求められ、それに応じるための国債の換金売りが、国債価格のさらなる下落につながるという悪循環をもたらした。
後任選びを急いだ保守党
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