英国債の暴落の裏で起きていた年金基金LDIの問題について、ALMの専門家である明治大学の松山直樹教授が解説。
イギリスで9月末に起きた国債の暴落(金利急騰)はトラス前首相が1カ月あまりで交代する事態に発展した。
10月25日に就任したスナク新首相の下で財政計画は抜本的に見直される。騒動の発端は、9月6日に就任したばかりのトラス前首相が9月23日に発表した大規模減税で、その前に発表したエネルギー対策の財政支出と合わせて「財源なき財政出動」と見なされ、国債が売られ、金利が急騰、通貨ポンドも暴落した。ポピュリズム的な政策が金融市場からにノーを突きつけられた形だ。
その裏で、起きていたのが、年金基金の保有する国債換金売りであり、年金基金の運用手法LDI(Liability Driven Investment、債務主導型投資)に問題があったとされた。
そしてこの問題によって、中央銀行であるイングランド銀行は一時的に政策の逆行を迫られた。イングランド銀行はそれまで、インフレを抑制するために政策金利の引き上げを行い、QT(量的引き締め、国債の売却による市中の資金吸収)を行っていたのだが、本件に対処するために、9月28日から10月14日まで時限的に国債の買い上げを行った。
LDIは日本では聞き慣れない。どのような問題があったのか、ALM(資産負債の総合管理)に詳しい明治大学・総合数理学部現象数理学科の松山直樹教授に話を聞いた。
本来のALMでは負債に資産をマッチさせる
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