欧州が警戒「中国鉄道メーカー」信頼回復なるか 根強い不信感、市場参入へ巻き返しの策は?

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同じようなことは、チェコのメーカー、シュコダでもあった。シュコダは同様に売却先を探していたが、CRRCが狙っていると聞きつけたチェコ国内の企業や投資家から猛反発が起き、複数のチェコ企業が出資することで買収を回避させた、という例もある。

現状、CRRCが世界の鉄道メーカーでシェア1位である事実は変わらない。売り上げの9割が中国国内の需要であっても、その事実が虚偽のものではないことは確かであるから、無理にヨーロッパ市場を目指さなくてもいいのではないかと思わなくはない。

欧州での信頼を勝ち取れるか

だが、世界的に最も高度な技術や経験を必要とするヨーロッパ市場への進出は、企業として挑戦したくなるのは当然のことといえるし、そこへ食い込んでこそ、胸を張って世界シェア1位を宣言できるというものだ。また、中国国内の需要がこの先も続いていくかどうかはわからず、他地域を開拓していくことは企業として自然である。

だが、現在の中国はヨーロッパ市場において、とくに大事な信頼というピースを失っている。お金や技術力は頑張れば比較的簡単に取り戻すことが可能だが、一度なくした信頼を取り戻すことは容易なことではない。将来的に中国メーカーがヨーロッパ市場で成功するためには、技術力、経済力と共に、絶対的な信頼を勝ち取らない限りは夢のままで終わってしまうだろう。

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橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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