「保守王国」石川の"空気"から見えてくるもの 「裸のムラ」五百旗頭監督が語る地方局の可能性

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マイクを持った男性
今なお石川県政に大きな影響力を持つ森喜朗・元首相(写真:石川テレビ放送)

目には見えないが誰もが感じ取り、社会や集団を支配する「空気」。それはどのようにして生まれ、人びとに伝播し、同調圧力や忖度や横並びへと駆り立ててゆくのか──。全国で順次公開中の映画『裸のムラ』(石川テレビ放送制作)は、北陸の保守王国の県政界から市井の家族まで、さまざまな場に現れる「ムラ社会」の空気を描くローカル局ならではのポリティカル・ドキュメンタリーである。

だが、観る者は次第に気づかされる。これは石川だけの話ではない。日本中に通じる「普遍」かつ「不変」の構造であることに……。

監督は2020年春に富山県のチューリップテレビから石川テレビに移籍した五百旗頭幸男氏。取材を始めるきっかけは新型コロナ禍だった。「移籍したのはちょうど第一波のさなか。未知のウイルスで世の中が混乱し、人間や社会の本質がむき出しになっているのを感じていました。この空気を映像にしたいと思ったんです」と振り返る。

長期県政と市井の家族に共通する権力構造

取材対象はまず、当時現職最長の7期27年目に入っていた谷本正憲知事を頂点とする県政界。「無症状の方は石川県へお越しを」と失言しても、「4人以下の会食」を呼びかけながら自身は90人以上の会食が発覚しても、知事の権勢は揺るがない。ずらりと付き従う県庁職員たちが記者会見の質問に目を光らせ、議場では知事の手元に置くガラス製水差しの水滴を恭しく拭き取る女性職員の姿……。

石川県議会の知事席に置かれているガラス製水差しの水滴を丁寧に拭き取る女性職員(写真:石川テレビ放送)
次ページ8期目出馬を阻止する動きが身内から起こる
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