マスクが子どもの脳と心の成長を阻むリスクとは 子どもは相手の表情や口の動きを真似て学ぶ

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胎児期から幼少期にかけては、神経細胞の数が大人よりも多く、さらにはそれらがつながってネットワークが密になっていくことになります。

ここで問題が生じます。大人の脳では、1日に消費するエネルギーの20%は脳の活動で使われます。つまり、この時期に過剰なほど密なネットワークが形成されると、エネルギーの供給が追いつかなくなる。つまり、個体は生存できなくなるのです。

1歳でピークを迎える「脳の感受性期」

しかし、生命の仕組みはため息が出るほど美しい、と感じるイベントが起こります。生まれ落ちた環境において情報のやりとりによく使われるネットワークだけが生き残り、あまり使われないネットワークは無駄なので死んでいくのです。つまり、それぞれが置かれた環境において適応的に働く脳へと変化していくわけです。これを、「刈り込み(pruning)」現象といいます。

脳発達の感受性期とは、「環境に適応して生存可能性を高めるために必要となる脳内ネットワークの選択が急激に進む時期」ということができるのです。

大脳皮質の中で、感受性期が比較的早くに訪れるのは「視覚野」と「聴覚野」です。

これらの脳部位の感受性期は、およそ生後数カ月頃に始まります。1歳前ぐらいにピークを迎え、7~8歳頃まで続きます。そして、就学を迎える頃には環境の影響を受けにくくなる。つまり成熟に達するのです。

一次視覚野は頭部の後ろあたり(後頭葉)にあります。目から入力された情報から「それが何か」を検出する役割をしています。ここを損傷してしまうと、眼や視神経に異常がなくても視野が欠けて見えたり、モノの認識が難しくなったりします。

一次聴覚野は耳のやや後ろあたり(側頭葉)にあります。耳から入ってきた音を聞き分けて認識する役割をしていますが、ここが損傷すると、音が鳴っていると感じることができても、それが言葉なのか音楽なのか雑音なのかなどを区別することが難しくなります。

私たちは、目や耳から入ってきた環境からの情報を記憶などと照らし合わせて、それが何を意味しているかを理解します。そして、それに対する反応を言語化したり、意思決定して行動に移したりすることによって、複雑に変化する社会の中で生きていくことができるのです。

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