道交法改正、電動キックボード免許不要の可能性 メーカーの保安基準対応と安全性確保を探る

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ISSIMO FUN
イタリアの2輪メーカー「ファンティック」が製造するeバイク「ISSIMO FUN」(筆者撮影)

同社では、前述のとおり、海外製バイクを長年扱ってきたが、まさにバイクの場合がそうだったという。一時期のブームでユーザーが増加したが、事故が増えたことで規制も強化、結果的に需要減少を招くという歴史を繰り返してきた。そうした経験から電動キックボードについても、道路環境などを改善し事故対策をしない限り、規制緩和により一過性のブームはあっても、「長いスパンで考えると、普及は難しいかもしれない」という見解を示した。

将来を見据えた新制度導入を望む

電動キックボードは、一般販売のほかに、都市部や観光地でのシェアリングサービスとしての活用も期待されている。海外では導入例が多い事業形態だが、日本ではまだ実証実験が行われているレベルで、主にスタートアップ企業などが参入することで、国内の新しい産業としても注目度が高い。

免許やヘルメット着用が不要など、多くの規制緩和を盛り込んだ今回の改正道路交通法は、そうした事業に関しても、誰でも気軽に乗れることで利用者が増える可能性は十分高い。だが、モータリストの担当者が語ったように、規制の緩和が結果的に事故の増加となる可能性も否めない。道路環境も含めた、抜本的な改革がない限り、十分に安全を担保することは、確かに難しいともいえる。

いずれにしろ、今回の改正道路交通法が施行されるまでに、あまり時間がないことだけは確かだ。電動キックボード自体は、新しい需要を生むことや、新規事業の創出につながる可能性も高いだけに、くれぐれも「先走り」の新制度導入にならないよう祈りたい。

平塚 直樹 ライター&エディター

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ひらつか なおき / Naoki Hiratsuka

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなどの専門雑誌やウェブメディアの編集者を経てフリーランスに。生粋の文系ながら、近年は自動運転や自動車部品、ITなど、テクノロジー分野の取材・執筆にも挑戦。ほかにも、キャンピングカーや福祉車両など、4輪・2輪の幅広い分野の記事を手掛ける。知らない事も「聞けば分かる」の精神で、一般人目線の「分かりやすい文章」を信条に日々奮闘中。バイクと猫好き。

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