[Book Review 今週のラインナップ]
・『大久保利通 「知」を結ぶ指導者』
・『我が人生 ミハイル・ゴルバチョフ自伝』
・『デジタル国家ウクライナはロシアに勝利するか?』
・『絶版本』
[新書紹介 3分で4冊!サミングアップ]
・『どうすれば日本人の賃金は上がるのか』
・『ウクライナ現代史』
・『不登校でも学べる』
・『宇宙を動かしているものは何か』
評者・名古屋商科大学ビジネススクール教授 原田 泰
大久保利通は、政敵を追い落としながら、独裁的権力を握り、富国強兵と殖産興業を追求した人物であると考えられている。しかし本書は、大久保は独裁的権力を持っていたわけではなく、木戸孝允や岩倉具視の協力を求め、内務省においても下の者たちにむしろ担がれる存在だったとする。また、長期的には公議公論に基づく立憲君主制を目指していたという。
「独裁者」のイメージ覆す評伝 政策実行者としての大久保利通
薩摩藩に限ったことではないが、幕末には、公武合体、尊皇攘夷、開国と鎖国などの基本方針が大きく変動した。薩摩と長州の関係も揺れ動いた。攘夷を叫んでいた薩長が開国に向けてまとまる、という幕末の政治は評者にとって理解しにくいものだったが、本書を読めば、ほかに途がなかったと納得させられる。
薩摩藩は攘夷を叫ぶ武士を粛清し、大久保は数を頼んでことを起こそうとする処士横議(しょしおうぎ)の国家論が正論に行きつく保証はないと理解する。徳川家を廃さなければ国家の統一はなされない、天皇が西洋の君主のようになるためには京都から江戸への遷都が必須である、と認識した。そこで、廃藩置県によって、統一国家と国民を作ろうとした。
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